芸能

【爆笑問題が語るテレビとコンプラ】太田光「どの時代もテレビはがんじがらめ」「ダメな言葉の線引きが変わっているだけ」

爆笑問題はいまの「テレビとコンプラ」をどう見ているか

爆笑問題はいまの「テレビとコンプラ」をどう見ているか

 発言を切り取られ“不適切”の烙印を押されることを過剰に恐れる現代において、爆笑問題はテレビ、漫才、ラジオで時事問題に臆することなく斬り込んできた。時に炎上を経験しながらも、政治や社会問題を笑いに変えてきた太田光(58)と田中裕二(59)は今のコンプラ至上主義時代をどのように見つめるのか。聞き手は“テレビっ子”ライターのてれびのスキマ氏。【全3回の第1回】

 * * *
──昭和の価値観に光を当てて話題になったドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)はご覧になりましたか。

田中:2話までしか見てないけど、面白かったね。

太田:2話じゃわかんないだろ! 俺は最後まで見たけど、くだらなくて楽しかったね。ドラマ『VIVANT』(TBS系)の時の“伏線をいかに回収するかがすべて”みたいな考察ブームが、クドカン(脚本家の宮藤官九郎)はウザかったんだと思う。

──最近は、作品を引いた目線で分析して語ることを良しとする風潮が強いのかもしれません。

太田:俺たちの芽が出ていない時、ライブの打ち上げで「俺たちのやっている芸はテレビに出ているような連中と違うから」って語っているヤツが嫌で嫌で。若手の頃から、ずっとくだらない話をしていたいと思っていました。その意味では『ふてほど』はめちゃくちゃな展開で痛快だったね。

──爆笑問題さんがデビューしたのが1988年。その頃の芸能も“不適切”で溢れていました。

太田:社会や政治を笑いで風刺するのはチャップリンの時代からあるわけだし、デビューした当時もブラックジョークの“不適切”なお笑いはたくさんありましたよね。俺らがデビューする前には(劇作家の)宮沢章夫がいたラジカル・ガジベリビンバ・システムが活躍していたし、ツービートだって「寝る前に必ず締めよう親の首」とかやっていたわけ。タモリさんもかなりブラックな内容のネタLPを出していた。ドリフはPTAに猛抗議されていましたよね。

田中:僕も(ビート)たけしさんの影響をモロに受けていたので、建前をひっくり返して本音で言うことの痛快さが面白いと思っていましたから。

──爆笑問題さんもデビューした当時から、チェルノブイリ原発事故や中国残留孤児を扱ったネタをされていましたね。

田中:テレビじゃ流せないって当時の僕らも散々言われていました。その時はライブが多かったのですが。

太田:テレビって昔からがんじがらめのメディアだからね。ダメな言葉の線引きが変わっているだけで本質的にはほとんど変わっていないよ。きっと、どの時代もテレビは窮屈だってずっと言われ続けるんじゃないかな。

──爆笑問題さんは時代の流れの中でどのように生き残ってきたのでしょうか。

太田:我々がやりたい本質は「人間って他の人間をこう差別するよね」とか「綺麗事言っているけど、本当は嫌なのが表情に出ちゃうよね」ってこと。例えば「放射性物質」を茶化すことはできないけど、「道端のうんこ」は茶化すことができる。茶化すための言葉を時代によって変えているというだけなんだけどね。

第2回に続く

【プロフィール】
てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。テレビ番組に関する取材を行なう。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イースト・プレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)など。

※週刊ポスト2024年4月26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

連ドラの主演を2クール連続で務める松本若菜
【まさに“代打の女神さま”】松本若菜、“別の女優が急きょ降板”で10月ドラマで2クール連続主演 『西園寺さん』も企画段階では違う大物女優が主演の予定だった
女性セブン
史上最速優勝を果たした大の里(時事通信フォト)
【角界の世代交代】史上最速優勝の大の里に包囲網 最大のライバルはたたき上げの平戸海、日体大の同級生だった阿武剋・旭海雄・石崎らにも注目
週刊ポスト
33年ぶりに唐沢寿明が鈴木保奈美と共演する
【地上波ドラマでは『愛という名のもとに』以来33年ぶり】唐沢寿明、2025年1月期で4年ぶり民放連ドラ主演、共演は鈴木保奈美 テレ朝は大きな期待
女性セブン
一時は通常の食事がとれないほどだったという(7月、岐阜市。時事通信フォト)
宮内庁の来年度予算概算要求「医療環境の整備等」が約1.5倍に増額 “大腸ビデオスコープ”への予算計上で再燃する紀子さまの胃腸への不安
女性セブン
事件現場となったアパート
《東大阪・中高生3人誘拐》「事件の夜、女の子の怒鳴り声が」咳止めの市販薬を80錠使用して急性薬物中毒に…逮捕された男のアパートで目撃された“黒髪の女子学生“
NEWSポストセブン
NHKの山内泉アナ
《極秘結婚していたNHK山内泉アナ》ギャップ感あふれるボーイッシュ私服は約9000円のオシャレブランド お相手は慶応同級生…大学時代から培った「ビビットな感性」
NEWSポストセブン
不同意わいせつ容疑で書類送検された山口晋衆院議員(Facebookより)
《不同意わいせつ容疑で書類送検》自民・山口晋議員、エレベーター内キス目撃した20代女性の母親に「ガス会社の社員」を名乗った理由
NEWSポストセブン
長澤まさみ
松本潤、野田秀樹氏の舞台で共演する長澤まさみを“別宅”に招いて打ち上げを開いた夜 私生活では距離があった2人がお互いを高め合う関係に
女性セブン
三田寛子がSNSに載せた初めてのツーショットの真相
《三田寛子の誕生日ツーショット》実は「バースデー当日の写真ではない」疑惑が浮上 中村芝翫は愛人と同棲する家へ直行していた
NEWSポストセブン
妻とみられる女性とともに買い物に出かけていた水原元通訳
《買い出しツーショット》水原一平被告が痩せてロン毛に…購入した「米とビール」にみる現状の生活
NEWSポストセブン
斎藤元彦知事。職場外でも“知事特権”疑惑が(時事通信)
【まるで独裁者】兵庫県・斎藤元彦知事「どこでも仕事すべき」と論じるSNS投稿に映しだされていた「真っ白なGoogleカレンダー」
NEWSポストセブン
再婚発表に賛否両論
東出昌大、再婚の裏側 親しい知人への報告は「発表の直前」 “山暮らしの後輩女優”の1人はSNSで「勝手」と意味深なメッセージ
女性セブン