ライフ

家庭用EMS美顔器に失神リスク、首付近への使用は避けるよう推奨、消費者庁が注意喚起

美容医療に関連した重大事故の発生を報告した消費者庁(写真/イメージマート)

家庭用EMS美顔器に失神リスクがあるとして消費者庁が注意喚起(写真/イメージマート)

 家庭での美容機器の利用が一般化する中、特にEMS(Electrical Muscle Stimulation)美顔器を首近くに使用したときに、失神のリスクがあるとして、2024年4月11日に消費者庁が注意喚起をしている。

首の両側をはさむタイプでめまい

 消費者庁の関連組織である消費者安全調査委員会は、首の両側をはさむヘッドホンタイプのEMS美顔器の使用によって突然のめまいが発生した事例について報告している。同委員会が情報を得て調査を進めたところ、同様の事故が再発する可能性があることが確認されたという。

 報告によると、首付近に美顔器を使用すると、頸動脈が刺激されて失神に至るリスクがある。特に首に強い圧力がかかった場合に「反射性失神」が発生しやすくなるので注意を要する。失神自体は短時間で回復することが多いものの、失神したことで転倒した場合に頭をケガするなどの二次的な被害に遭う可能性が考えられている。

 消費者庁では、めまいなどの失神の前兆があるときには使用を中止し、なるべく早く横になって休むように求めている。失神の前兆として次のような症状を挙げている。

• 頭が締め付けられるような感覚
• 物がダブって見える状態
• 吐き気や嘔吐を催すとき
• 意識が遠のく感覚など

 前兆があったときにすぐにできることとしては、座っている場合は足を交差させて組ませたり、立っている場合は座ったり、横になったりするなどで、次のような対応を挙げている。

• その場でしゃがみこむ
• 横になる
• 立っている場合は足を動かす
• 座っている場合は足を交差させて組ませる
• 両腕を組んで引っ張り合う

 いずれにしても早く休むのが重要だと説明している。また、高齢者では、首をはさむことで圧迫されて、血管の中で血液が固まるという別のリスクもあり注意する必要がある。

 消費者庁では、EMS美顔器を首周辺に使うのは避けるように推奨している。

人気の美容家電、トラブルの報告も

 消費者庁によると、家庭用美顔器には様々なタイプがあり、それぞれに異なるメカニズムでフェイスラインを引き締める効果を出す。その中でも、EMSは直接筋肉を刺激する方式で運動効果を得るものとなる、脂肪に直接働いて脂肪を減らすものではない。上の図のような美顔器が首に押し当てて使われることがあり得るという。消費者庁が運営する「事故情報データバンク」によると次のような報告があった。

• 首のあたりにEMS(電気筋肉刺激)のマットを当てられ、2時間電気をかけると言われたが、1時間もしないうちに気分が悪くなり耐えられなくなった。
• 美顔器を顎と鼻にすべらせたが、頭の中がグルグル回っているような感覚に襲われた。
• スポーツクラブの宣伝販売で、美顔器ローラーを右の頬に当てられ、強く上げられたため、右頬が上がったような状態になった。4日後の夕方にめまいがして吐き気がひどく倒れてしまった。
• お肌がきれいになるという美顔器を1、2回説明書どおり、頭に使ったところ、めまいがした。
• 美顔器を使用していたら、心臓の動悸がして、使用をやめたらなくなった。
• 美顔器の使用2日後にめまいがするなど体調を悪くした。

 このほか超音波は、振動による深部温熱療法、RF(高周波、ラジオ波)は体内深部の水分や分子を振動させ、血行やリンパの流れを改善する方式という。それぞれ異なる方式によって、使用時の注意点も異なる。

 美容や健康の家電は人気を集めて、国内市場は2025年に、2022年の114.9%に当たる4220億円に達するという予想がある。フェイス用の美顔器もこの中に含まれている。美顔器をめぐっては今回のような健康に関連したトラブルのほか、通信販売の返金トラブルが報告されている。身近な製品であるだけに事故の情報も理解しておくと良いだろう。

参考文献

令和6年度 消費者安全調査委員会からの一葉

市場拡大を続ける美容家電、高価格ドライヤーなどが成長を引っ張る、富士経済が分析

SNS広告経由の美顔器購入でトラブル、説明の分かりづらさには問題のリスク、国民生活センターがトラブル解決事例を公開

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

ヒフコNEWS

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

関連キーワード

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン