ライフ

【新刊】自分の言葉を持つことの大切さを語りかける…辻村深月氏の小学生新聞連載エッセイ『あなたの言葉を』など4冊

 新緑の季節がやってきた。心地よいそよ風を受けながら、緑を感じる散歩が楽しくなるこの時期。ぽかぽかした陽気の中で、読書を楽しんでみては? いま、おすすめの新刊を紹介する。

世の中には“正解”がありそうですが、実は、ないことがほとんどです(本文より)

世の中には“正解”がありそうですが、実は、ないことがほとんどです(本文より)

『あなたの言葉を』/辻村深月/毎日新聞出版/1540円
 小学生新聞の連載エッセイの単行本化。著者は小中高生達の瑞々しい世界を描くが、なぜ書けるのかと言えば当時の気持ちを忘れていないから。大人未満の読者に自分の言葉を持つことの大切さを語りかける。著者は登場人物達に行動させてから、その心を考えるとか。すると小説が深くなる。無意識の行動の後にその理由を考えてみるのは「自分の心を知るチャンス」と優しく説く。

「ゆるSF」なる新機軸。新しき“共生”を火星にさがす

「ゆるSF」なる新機軸。新しき“共生”を火星にさがす

『あきらめる』/山崎ナオコーラ/小学館/1980円
 養育親が5人まで認められ、火星にも移住できる未来。妻と別居中の退職者雄大は輝と5歳の龍の親子と仲良くなり、彼らはそれぞれの理由で火星移住を決める。結婚や熟年離婚、「育てたい欲」、恋愛依存や恋愛無関心など登場人物達の内面が凄く“今”。「あきらめる」の語源は「明らかにする」。固着の在処が見えれば自己過信も手放せる。家族解体は家族再生。未来は面白そうだ。

好きだったアイドル、奪われた恋人。平凡な男達が人生の後半で再び見る夢

好きだったアイドル、奪われた恋人。平凡な男達が人生の後半で再び見る夢

『高橋留美子傑作集 金の力』/高橋留美子/小学館ビッグコミックススペシャル/1595円
 着物姿で化けて出て夫婦仲を険悪にしたあげく、(出る先を)「間違えました」と去っていく幽霊に大笑い。派遣の美人家政婦さんを巡って義父と恋敵になる妄想を抱く男、シニアの話し相手になる男性コンパニオンが一瞬夢見た逆玉の輿、小さな老人が視界をかすめると必ず不幸な目に遭ってきた元銀行マンが悟る真実など、平凡な中高年男に訪れる魔の時をユーモラスに描く6編。

2022年、放送作家の著者が受賞した『このミステリーがすごい!』大賞作

2022年、放送作家の著者が受賞した『このミステリーがすごい!』大賞作

『名探偵のままでいて』/小西マサテル/宝島社文庫/880円
 安楽椅子探偵は古典的ジャンルの一つ。ユダヤ人ママや外出嫌いの美食家、首から下が不自由な元刑事などが活躍するが、本書の探偵はレビー小体型認知症を患う元校長。この祖父が孫娘・楓の持ち込む謎を嬉々として解く。居酒屋の密室殺人、消失した女性教師など5話の連作を経て不気味なストーカーが楓を標的にする最終章は、恋も芽吹く大団円。ミステリー名作談議も楽しい。

※女性セブン2024年5月2日号

関連記事

トピックス

インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
PTSDについて大学で講義も行っている渡邊渚さん(本人提供)
渡邊渚さんが憤る“性暴力”問題「加害者は呼吸をするように嘘をつき、都合のいい解釈を繰り広げる」 性暴力と恋愛の区別すらできない加害者や擁護者への失望【独占手記】
週刊ポスト