ゲスト出演した作品でも、『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』(TBS系、2022年夏)では、電動キックボードで事故を起こし、ひき逃げの容疑をかけられる女性。『風間公親-教場0-』(フジテレビ系、2023年春)では、もてあそばれた男を殺した直後に、壮絶な孤立出産した女性。
これまで出演した1クールの連ドラ全作で、ただかわいいだけではなく、芯の強い女性を演じてきたことが分かるのではないでしょうか。さらに、その芯の強い女性は連ドラの主人公として重用されるキャラクター設定だけに、昨年の段階から業界内で「めるるは主演待ったなし」という声を何度も聞いていました。
『くるり』で演じる緒方まことも、記憶を失い、会社での居場所も失いながらも、前を向きリング職人を志す芯の強い女性。「公私とも、人に嫌われないように本当の自分を隠してきた」という記憶を失う前の自分と向き合おうとするポジティブな姿が共感を集めています。
「経験3年、出演9作」の発展途上
ここまで称賛を集めているとはいえ、生見さんの俳優としての経験は3年、出演作も9作に過ぎません。
生見さん自身、これまでオーディションに落ち続けてきたことを明かしていますし、「まだまだお芝居を勉強中」などと謙虚に語っている発展途上の段階。ある民放ドラマプロデューサーと話したとき、「もちろん技術的な課題はあるでしょうが、ワンカットで一気に引きつけられるのは才能」「現場で監督や先輩俳優から学びながらグングン成長している感じが伝わってくる」などと語っていました。
また、あるバラエティのディレクターは、「自他ともに認める人見知りの性格が、俳優としての人間観察や演技としての表現に生きているのではないか」と推察していました。男女を問わず俳優の中には人見知りを公言する人が珍しくなく、番宣でバラエティに出演すると借りてきた猫のようになってしまうケースをしばしば見かけます。
その点、生見さんはバラエティに出演し続けることで最近は、人見知りを克服したわけではないものの、どこか自分ではない“バラエティタレントの女性”を演じているようなムードが出てきました。借りてきた猫のように引いてしまうことはないけど、無理してコメントしたり、リアクションを取ったりもしない。しかし、『くるり』の番宣では“主演俳優としての生見愛瑠”を演じているように堂々とした受け答えをしている感があります。
いずれにしても、俳優として急速な成長を続ける今の生見さんにとって、すべての経験が俳優として生きているのではないか。そう感じてしまうほど旬の輝きがあり、演技の技術以前にそれを感じ取って称えている人が多いのかもしれません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。