北朝鮮と国境を接する中国吉林省長白朝鮮自治県に建てられている高さ50メートルの観光用展望台について、北朝鮮側が「見世物にされている」としてクレームをつけ、北朝鮮軍の兵士が中国人観光客に自動小銃の銃口を向け威嚇する一方で、対する中国側が石を投げるなど、両者間で小競り合いが起きていることが分かった。このまま放置すれば、事態が悪化する恐れもあり、展望台は一時的に閉鎖されている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
この展望台は中国の観光業者が2021年に建設したもので、展望台からは北朝鮮の街並みや人々の様子が一目で見ることができる。
また展望台の入場料金は7元(約150円)と安いこともあって、毎日多くの観光客でにぎわうなど、この地域では最も人気の高い観光施設となっているという。
しかし、北朝鮮側は見下ろされる形となり、住民から「彼ら(中国人)は我々をまるで動物の群れを観察しているかのように写真を撮っている。我々は見世物ではない」などとの苦情が出た。それを受けて北朝鮮の恵山市当局は、長白朝鮮自治県側に「展望台は国境地帯に不要な施設を建設しないという両国の国境管理協定に違反する建築物で、取り壊すべきだ」と申し入れを行った。
これに対して、長白朝鮮自治県は「観光業者が建てたもので、県は関係ない」と反発していたが、国境警備の北朝鮮軍兵士が展望台に向かって大声で怒鳴ったり、自動小銃を構えるなどしたことから、中国人観光客が兵士らに石を投げつけるなど、一触即発の状態になったという。
この事態に、北朝鮮側は県当局に対して「このような事態が繰り返されれば、両国間の紛争が今後発展する可能性がある」と警告。中国側も業者に対して、「しばらく休業して、様子を見てほしい」と要請し、業者は3月15日から営業を停止しているが、北朝鮮側は「両国の取り決めに従って、展望台を撤去すべきだ」との主張を繰り返しているという。