裏金事件がこれだけ問題になったのに大した処分もなく、「次の選挙でも結局、政治は変わらないのでは」と諦めを抱く人もいるかもしれない。決してそんなことはない。有権者の間で「落選運動」が大きなうねりとなれば、選挙結果は変わる。“親の七光り”で当選してきた世襲議員たちも今度は厳しい審判を受けるのではないか。
安倍派からの裏金を政治資金として父から“相続”した疑いがあるのが岸信夫・元防衛相の長男・信千世氏だ。
「(父の代を含めて)事務所内で適切な対応を取っていることを確認した」
信千世氏は裏金問題についてそう説明していたが、今年2月、父から引き継いだ資金管理団体「誠信会」が2020年と2021年に安倍派から合計30万円のキックバックを受けていたと政治資金収支報告書を修正。資金管理団体が持っていた裏金を含む政治資金を“相続”した疑惑につながるのだ。
岸事務所に聞くと、「ご質問のパーティーにかかる収入は前代表者の時代に事務所で販売したものであり、後任代表者である岸信千世は全く関与しておりません」と回答するが、2021年当時、信千世氏は父の防衛大臣秘書官を務めていた。
次の総選挙でこの裏金相続問題を争点に落選運動が展開されれば、政界に大きな影響力を誇った安倍・岸家は残った唯一の議席を失うかもしれない。
裏金問題引きずる候補者の対決に地元は困惑
二階俊博・元幹事長の引退表明で「世襲候補vs裏金議員」の対決になりそうなのが和歌山新2区だ。後援会関係者の間では、ともに公設秘書を務める二階氏の長男か三男が「後継者として出馬する」との見方が強いが、そこに裏金問題で離党勧告処分を受けた世耕弘成・参院議員が衆院に鞍替えして無所属で出馬するとの報道がなされ、激戦が予想されている。
地元の市民団体関係者は困惑顔だ。
「二階さんの元秘書は政治資金規正法違反で立件された。2人の息子さんも長く秘書を務めているから裏金問題と無縁とは言えない。
それと裏金問題で離党した世耕さんが戦うことになれば投票したい人がいない。日本維新の会の新人などの候補が出馬すれば、批判票の受け皿になるでしょう」
裏金批判を浴びる二階氏の後継者と世耕氏を共倒れさせるには、双方の落選を求める有権者の投票先となれる“第3の候補”擁立を維新などに求めるのが早道のようだ。
※週刊ポスト2024年5月3・10日号