想像を超えた“あなただけのリアル”を描いた作品を募集した「スペリオール ドキュメントコミック大賞」。今回初めて開催された本賞には、予想を超える70本もの作品の応募があった。審査員をつとめたノンフィクション作家・石井光太氏、漫画家・押見修造氏、「街録Ch」ディレクター・三谷三四郎氏とビッグコミック スペリオール編集部による2時間半におよぶ白熱の審査会の結果、3作品が受賞となった。
スペリオール編集長・寺澤広蔵は総評として「“ドキュメントコミック”の名を冠した賞は例がなく、小誌にとっても初の試みでしたが、そこに可能性を感じ、ご応募いただいた皆様に深く感謝申し上げます。“ドキュメント”と銘打ったことで、物語のための物語ではなく、作者が本当に描きたいもの、描かずにはいられないものがストレートに表現された作品、つまり表現の根源に触れる力作揃いでした」と感想を述べた。
そして大賞受賞となった宮川サトシ氏の『名前のない病気』について「これまで様々な作品を世に出されている宮川さんが“唯一、描かなかったこと”であり、“描かなければ人生終われないこと”でもあるという、一人の作家の根本に関わる作品を投稿していただきました」と絶賛した。大賞受賞作『名前のない病気』は今年夏、「スペリオール」にて連載開始予定。審査員からも高い評価を得た本作を是非読んでみてもらいたい。
※審査会レポート、大賞受賞インタビューはこちらで読めます。
大賞100万円+連載確約
『名前のない病気』宮川サトシ
東京でエッセイ漫画家として妻と子供と暮らしている主人公には、これまで作中に一度も登場させたことのない30年もの引きこもり生活を送る兄がいる。“名前のない病気”に振り回されることで、幸せだったはずの家族は崩れていった…。家族とは何か? 幸せとは何か? 独特の筆致で問いかける衝撃作。
入選50万円
『ある新米戦場ジャーナリストの1年』五十嵐哲郎
長年勤めていたNHKを辞めて、戦地ウクライナに旅立ったイガラシ。「戦争とは何か?」という疑問への答えを求めて、激戦地の奥へ奥へと突き進む主人公の1年にわたる取材記。
佳作30万円
『暴力病院と搾取クリニック』水谷緑
暴力によって患者を支配している病院、治療費という名目で行き場のない患者から搾取しているクリニック…。長期間、取材を重ねてきた著者による精神科の裏側を描く意欲作。