腰部脊柱管狭窄症は脳に繋がった神経の束が通る脊柱管が狭くなり、脚の痛みやしびれ、排尿障害などが起こる。患者は推計500万人だが、病院を受診せず、市販薬や民間療法に頼る患者も多い。その原因の一つが手術に対する恐怖心だ。しかし、この10年で手術法が進化し、最小侵襲で出血や痛み、入院日数が減少した。まずは適切な治療を受けることが、早期の社会復帰への鍵だ。
超高齢化の進行に伴い、脊椎や椎間板の変形や障害で手脚の痛みやしびれ、歩行障害を訴える人が増えている。
特に腰部脊柱管狭窄症は歩行に様々な障害を起こすだけでなく、排尿障害のリスクもあるため、日常生活に不自由を生じさせている。
にもかかわらず、脊柱管という神経の束が通る近くを手術することへの恐怖心や術後の回復が遅いなどの思い込みもあって、何かと専門医の受診をためらう患者も数多い。
結果、市販薬や民間療法に頼り、痛みやしびれを我慢してしまう患者がいたりする。
慈恵大学病院整形外科・脊椎・脊髄センターの篠原光副センター長に聞いた。
「腰部脊柱管狭窄症の治療は、ここ10年で驚くほど進化しました。以前は軽症から中等症の治療には、まず服薬と痛みを軽減する神経ブロックを行ないましたが、症状が進行すると、後は手術しか選択肢がなかったのです。それが現在ではカテーテルによる経仙骨的脊柱管形成術(TSCP)治療の登場により、手術せずに済むような症例の他にも手術までの期間の先延ばしが可能になっています」
TSCPとは背骨の一番下の三角形の形をした骨、仙骨にある小さな穴(仙骨裂孔)からカテーテルを挿入し、脊柱管内部の癒着を剥がして薬剤を直接注入することで、辛い症状を取り去る治療だ。
具体的には局所麻酔で腰部を3~4mm切開、そこから先端が自在にコントロールできる構造のデバイス(プローブ)を挿入する。治療は透視画像を見ながら20分程度で済む。