放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、『笑点』新メンバーについて綴る。
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75歳にもなって落ち着きのない毎日。『笑点』新メンバーは立川晴の輔と発表のあった翌昼、ニッポン放送へ喋りに行くと玄関で小犬のように震えてお菓子を持って立っている男ひとり。「そういうことになりまして、あいさつ遅れてすいません」「昇太の昔から一之輔、お前と何で俺に言わねぇんだ」「高田センセーだけには教えるなと“笑点サイド”から言われてまして」。まあ何にしてもめでたいからいいや。
晴の輔は東農大農学部で真打披露のパーティの時は学生達で大根を持って名物大根踊りをやっていた。「最後の最後の大トリでごあいさつお願いします」と言われていたのですっかり酔ってしまい、壇上に立川流などズラリ並んだところで私。いきなりとんでもないことを言って会場が揺れて倒れるかと思った。師匠の志の輔そっと私の耳元で「新真打もこれでいい想い出ができました」だと。初代司会者・談志以来55年ぶりの『笑点』に立川流入りである。
「さそり」「キル・ビル」何しろ格好いい梶芽衣子がやってきた。きけば新曲ばかりのアルバムを出し、5月12日には渋谷でライブもやる(行けそうな人は調べて下さい)。失礼だから年齢の話は出さなかったのに自分から「“7”って数が好きなのよ。77歳文句ある?」。ふた言目には「あたしゃね、神田だからネ、文句ある?」。ある訳がない。面白く格好いいお姐さんである。この小気味良さ誰かに似てるなと思ったら加賀まりこさん、そして私の姉もこんな性分。
格好いいと言えば音楽界的にはなんたって加藤和彦でありました。音楽もファッションも食通ぶりも総て我々の一歩二歩どころか三歩先を行っていました。若い人にこの名を出してももう知らないんですネ。「ザ・フォーク・クルセダーズ」「北山修」「帰って来たヨッパライ」「あの素晴しい愛をもう一度」「サディスティック・ミカ・バンド」「安井かずみ」と言っても分からない世代が増えました。その生き方の小粋さを改めて教えてくれるドキュメント『トノバン 音楽家加藤和彦とその時代』が完成。5月末には公開。
刑事ドラマに出ているナイツ塙を見て私が「見たよ。流れるような棒読みだな」と言ったら負けず嫌いな塙、私のこの言葉から何と「劇団スティック」を立ちあげた。素人の棒読みばかりを集めたのだ。昨年(ふびんに思った戸田恵子が客演)に続き先日第2回公演を成功させた。今年はミュージカルであった。びっくり。
※週刊ポスト2024年5月3・10日号