4月10日に投開票が行なわれた韓国の総選挙は、野党の「地滑り的勝利」と日本でも大きく報じられた。
その原動力になったのが「落選運動」だ。韓国政治に詳しい平井敏晴・漢陽女子大学助教授が指摘する。
「韓国では2016年の総選挙で展開された落選運動を当局が厳しく取り締まったため、一時下火になっていました。しかし、2022年の最高裁判決で落選運動の逮捕者に無罪判決が確定したことから、今回の総選挙で復活して盛り上がりました」
そもそも世界で最初に落選運動の力が注目されたのが韓国だ。2000年の総選挙では、市民団体などが連帯して運動を実施し、「不適格」と名指しされた候補の約7割を落選に追い込んだ。
今回の総選挙では、幅広いテーマの市民団体など90の組織で結成された「総選挙市民ネットワーク」(総選挙ネット)が中心になって落選運動が展開された。
平井氏によると、韓国の落選運動は2段階で行なわれる。
総選挙ネットはまず有権者や各団体がそれぞれの視点から不適格だとした候補から89人を選定。さらに議論を経て絞り込み、共同して落選を働きかけるべきと考えられる与野党35人の公認反対名簿を公表した。中には、「ゲイはどう正せるか」と発言した議員や、水害復旧地域で「雨が少し降ってほしい。写真が良く写るから」と発言して批判された議員などが含まれていた。
この第1段階では、総選挙ネットが各政党に対して名簿にある候補を公認しないように求める「落薦運動」を行なった。それでも出馬した候補には、有権者に「落選」を呼びかける第2段階の運動を展開したのだ。