肥満に悩む人たちの救世主となり得る医薬品が日本に上陸した。日本初となる薬局で買える大正製薬の内臓脂肪減少薬「アライ」だ。4月8日に発売されるとたちまち話題になっているが、いったいどんな薬なのか。【前後編の前編。後編を読む】
アライの有効成分であるオルリスタットは1997年に医療用医薬品「ゼニカル」(オルリスタット120mg)として承認され、その半量となる一般用医薬品「アライ」(オルリスタット60mg)は2007年にアメリカで承認された。以降、70か国以上で販売されている薬が、日本でも購入できるようになったのだ。
大正製薬は「具体的な反響や売れ行きなどについては情報開示しておりません」(コーポレートコミュニケーション部)とするが、完売となる薬局も現われている。日本での臨床試験では1年間の服用でお腹まわりが平均4.73cm、内臓脂肪の面積が21.52%減少したという。内臓脂肪を減少させるとはどのようなメカニズムなのか。東中野セント・アンジェラクリニックの植地泰之院長が解説する。
「アライの有効成分のオルリスタットは、脂肪を分解するリパーゼという酵素の働きを抑制します。このため食事の際に口から入った脂肪が腸で吸収されず、そのまま便と一緒に肛門から排出されるようになります。摂取した油(脂肪)の25%ほどが体内に吸収されず、便とともに排出されると試算されるので、なかなかの効果と言えます」
アライの働きは脂肪の吸収を防ぐだけではない。
「アライの服用で食事に含まれる脂肪が吸収されなくなると、代わりに体内に蓄積している脂肪がエネルギー源として消費されます。その結果として、内臓脂肪やお腹まわりのぜい肉が減っていくというメカニズムです」(植地院長)
もっとも、「何をどれだけ食べても太らなくなる」というのは誤りだ。
「BMI25以上の肥満気味で、とんかつや背脂たっぷりラーメンを食べるような人はアライを服用すれば摂取した脂肪の約25%が排出されるため効率よく効果を得られます。一方で炭水化物が好きで脂肪が多いものはあまり食べない人や、食事はサラダだけという人が服用しても効果はあまり期待できません」(同前)