近年はSNSで選挙にまつわる出来事がバズることが増えているが、残念ながら投票率の下落傾向は止まらない。2024年東京15区衆議院議員補欠選挙の投票率は40.70%で、2003年に現在の江東区からなる選挙区となって以降で最低を記録した。長らく選挙の取材を続けているライターの小川裕夫氏が、SNSでも注目を集めた選挙“妨害”について考察する。
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2024年4月28日に投開票された衆議院議員補欠選挙は、東京15区・島根1区・長崎3区すべてで立憲民主党の候補が当選を果たした。
永田町・霞が関を15年以上も取材する筆者にとって、今回の3補選はどれも興味深い戦いだったが、その中でも特に東京15区は見どころ満載の選挙だった。
東京15区には、届出順に「福永活也(福永かつや)」「乙武洋匡(乙武ひろただ)」「吉川里奈(吉川りな)」「秋元司(あきもと司)」「金澤結衣(金澤ゆい)」「根本良輔(根本りょうすけ)」「酒井菜摘(酒井なつみ)」「飯山陽(飯山あかり)」「須藤元気」(※カッコ内は届出名)の9名が立候補。
福永候補は告示日に立候補の届出を済ませた後、エベレスト登頂のために日本を出国。投開票日までに帰国せず、実質的に選挙活動はしていない。
そのため、筆者は福永候補の街頭演説を取材することは叶わなかったが、残り8名の街頭演説を取材している。今回の選挙戦はすでに結果は出ており、多くの政治評論家やジャーナリストから多角的な分析がなされている。
選挙結果の分析やその後の動向などは他者に譲るとして、本稿では東京15区で起きて話題となっていた街頭演説への“突撃”、有り体に言えば競合陣営への選挙“妨害”について考察していきたい。
選挙“妨害”を断定できない難しさ
今回、つばさの党から立候補した根本良輔候補は自身の選挙活動と並行しながら、つばさの党の党首である黒川敦彦氏とともに他陣営の街頭演説や選挙事務所に乗り込み、耳を塞ぎたくなるような大音量を流して他陣営の批判を繰り返した。
根本候補のスピーカーから流れる音があまりにも大きかったため、演説を聞きに集まったギャラリーに候補者の声は届かず、候補者はスピーカーの音量を大きくして対抗した。
根本候補も張り合うように音量を上げたため、街頭演説の場は大音量が響き渡る騒音地帯と化した。