睡眠の研究で今、「最もノーベル賞に近い」と評される学者が筑波大学にいる。睡眠研究の第一人者、柳沢正史教授である。学生時代から不眠に悩まされてきたという59歳のジャーナリスト・横田増生氏が、その快眠メソッドを学びに門を叩いた。【前後編の後編。前編から読む】
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9つの心得
こうすれば眠れるという万人に共通する方法はない、と柳沢教授は言う。いい睡眠を手に入れるには、消去法で眠れない要素を排除していくしかないのだ。
その上で9つの心得を教えてくれた。
【1】日本の寝室は明るすぎます。寝室の照明を、雰囲気のいいレストランか、欧米のホテルぐらいまでに落とすのが必要です。光そのものに覚醒作用があり、朝浴びる光には体内時計をリセットするというプラスの効果があります。けれども、夜になっても明るいままだと、メラトニンという眠るのに必要なホルモンの分泌を抑制しますし、体内時計も後ろにずれてしまいます。このため、眠気が訪れにくくなるのです。昼行性である人間は、薄暗い環境でリラックスできるのです。直接照明ではなく、間接照明を取り入れるのも一つの手段でしょう。
【2】スマホのブルーライトが眠りを妨げるという意見もありますが、光量が少ないので、そこまで気にする必要はないと思われます。ただ、スマホで見る内容には注意が必要です。SNSで『いいね』を押したり、感想を書き込んだり、YouTubeのショートをスクロールして見たりすると、能動的になり眠りから遠ざかります。
【3】寝落ちはよくありません。十分な準備をしないで寝るわけですから、電気をつけっぱなしにするだけでなく、テレビや音楽がつけっぱなしであることもあるわけです。睡眠中も聴覚は働き続けます。人間の聴覚は人の声に敏感なので、それだけで眠りを妨げ、覚醒作用を持つことになります。
【4】寝室の温度を朝まで適温に保ってください。エアコンは、夏も冬も一晩中つけておいて、快適な温度と湿度を保つことをお勧めします。電気代がかかることよりも、自分にとって快適な温度を朝まで保つことが質の良い睡眠には重要だと考えます。夏に寝汗をかいたり、冬には寒すぎるような部屋だと、目が覚めないまでも睡眠は浅くなります。