突然ですが、あなたは1年で何歳、年を取りますか? 「1歳に決まってるでしょ」──という声が聞こえてきそうですが、人によって見た目の“加齢スピード”は異なることが最新の研究でわかってきました。
「ダニーデン研究」と呼ばれる研究では、ニュージーランド南島のダニーデン市のある病院で1972~1973年にかけて生まれた1037人を対象に、26歳から45歳までの20年間の老化度を計算。1年の間にどのくらいのペースで生物学的年齢が進んだかを数値化した結果、「0.40歳」しか年をとらない人から、「2.44歳」も年をとる人まで幅があることが明らかになりました。
つまり、「5年間で2歳しか老けない人」もいれば、「12.2歳も老ける人」もいるということになります(※1)。
さらに別の研究では、双子であっても生活習慣によって加齢スピードは異なるということがわかっています。
下の画像は、それぞれ70歳(範囲69-71歳)の双子10組の平均的な外見を表す合成写真。左側の画像は、実年齢のわりに若く見える双子(平均知覚年齢64歳)で、右側の画像は実年齢より上に見える双子(平均知覚年齢74歳)を表しています。研究結果によると、見た目が老化しているほど死亡リスクは高まるそうです(※2)。
ペース・オブ・エイジング……加齢はコントロールできる
「これまで実年齢より若く見られてきたのですが、出産を経て身なりにあまり気を配らなくなったこともあり、2年ぶりに会った人に『可愛かったのに、どうしたん。おばはんやん!』と言われて傷ついた」(37歳女性)
「マイナンバーカード作成にあたり初めて自撮りをした際、これが今の自分の顔なのかと驚きました」(57歳女性)
──これは、読者組織「女性セブン倶楽部」の会員ユーザーに行ったアンケートに寄せられたエピソード。
最近、加齢に関して注目されているのがペース・オブ・エイジング(Pace of Aging、PoA)という考え方です。栄養状態や運動習慣、睡眠、環境などによって老化のペースには個人差があり、少しでも早いうちから対策をすることによって加齢(エイジング)のペースをコントロールしようというもので、たとえば欧米では、「食生活と加齢」などについて研究が進んでいます。
今回、「女性セブン倶楽部」で食生活や加齢に関するアンケートを行い、ユーザー2943人から回答を得ました。下記は、食生活についての質問です。ぜひみなさんも試してみてください。
若いはずの30代から「老け見え」に
上のチェックシートを監修したイシハラクリニック副院長で医師の石原新菜さんは次のように語ります。
「5個以上当てはまると『老け見え』タイプで、PoA度(老化スピード)は速いペースで進んでいる可能性があります。自覚症状がない場合でも、近い将来突然『見た目』や体調に変化が生じるかもしれません。
3〜4個だった人は『年相応』タイプで、PoA度は普通のペースで進んでいると言えます。油断せずにチェックがついた項目をひとつずつ改善することを心がけ、老化スピードを少しずつゆっくりにすることを目指しましょう。
2個以下の人は『若見え』タイプで、PoA度はゆっくり良好なペースで進んでいます。今の生活をキープすることを心がけましょう。チェックがついた項目がある方は、ひとつずつ改善していくと、なお良いでしょう」
今回のアンケート結果では、ユーザーの半数に迫る「48.4%」がチェックシートの項目で5個以上当てはまっていました。
しかも「Q.あなたは周囲の人から、実年齢と比べて見た目が『若い』と言われますか?『老けている』と言われますか?」という質問項目に対して「よく老けていると言われる」「どちらかというと老けていると言われる」と回答した“老け見え”さんに限って調べると、実に「63.3%」の人が5個以上当てはまる結果になっていました。
石原さんによると「栄養が偏った食事や欠食、睡眠不足などがペース・オブ・エイジングを速める主な要因になる」とのことです。
アンケートの中の「Q.あなたが最初に感じ始めた『老けの兆し』は何ですか?」という質問で、多かった回答の上位3つは「肌の衰え(乾燥、しみ、しわ、たるみ)」「髪の衰え(ハリ、ツヤ、ボリューム)」「体形(体のライン)の衰え」。しかも約3割の人が、30代までにその「老けの兆し」を感じ始めたという結果も出ました。
つまり「老けのサインは『見た目』から現れる」「30代は“まだ心配ない”とは言えない」ということです。
また、ユーザーからは自身の食生活を振り返ってこんな声も寄せられました。
「30代の頃の私に『肉ばかり食べずに魚、野菜も食べよう』と伝えたい」(46歳女性)
「もっとビタミン、たんぱく質をきちんと摂っておけば良かった」(37歳女性)
年代問わず嘆きの声が多く挙がりましたが、30代は仕事や子育てなどに追われて、なかなか食生活まで手が回らないという現実も無視できません。
バランス良く栄養を摂ることは、昔より難しくなっている?!
“外食中心だけど、時々コンビニでサラダを買っているから帳尻が合っている”と思っている人もいるかもしれません。しかし、農林中央金庫が運営する農業専門サイト『アグリウェブ』が公開しているデータによれば、1960年頃と2010年頃の野菜の栄養価を比べてみると、測定方法や品種の違いなどの影響もありますが、後者はビタミンやミネラルなどが半分くらいになってしまっているとのこと。
「食事についてはビタミンやミネラル、抗酸化成分といった栄養素を意識して摂ることが理想ですが、昔より野菜の栄養価も低くなっていますし、忙しい毎日の中で“完璧な食生活”を目指すことは難しいですよね。
それでも人間の身体はよくできていて、可逆性があるので『老け見え』対策は何歳から始めても遅くはありません。たとえば、コンビニ食がどうしても多くなってしまうなら、おにぎりにビタミンやミネラルを含んだ副菜をプラスするなど、自分ができる範囲で食生活を工夫していけば良いと思います。栄養不足が気になるという場合は、補助食品としてマルチビタミンやマルチミネラルなどのサプリメントを使うこともひとつの方法です」(前出・石原さん)
コンビニやドラッグストアに行くと、棚に並ぶ多くのサプリメント。要となるのはバランスのとれた普段の食事ですが、不足分を補う形でサプリメントをうまく取り入れることも「老け見え」対策のひとつとなりそうです。
最後に、ユーザーから寄せられた「過去の自分に言ってあげたいこと」──その切実な声をもう一回聞いておきましょう。
「とりあえず野菜を食べる。野菜が無理ならサプリでも補えるところは補う」(48歳女性)
「母に教わっていた1日30品目を目標にタンパク質、野菜、豆類、海藻類などもう少しバランスよく食べる!」(35歳女性)
※1 Nat Aging. 2021 March ; 1(3) : 295-308.
※2 BMJ. 2009 December ; 339 : b5262.
協力:ウェルネス総合研究所「ペース・オブ・エイジング(PoA)普及プロジェクト」
https://wellnesslab-report.jp/pj/poa/