銀行の窓口に現れたのは、車椅子に乗った髪の毛のないおじいさん。背後には付き添いの女性がいる。親族らしき女性がおじいさんにペンを握らせようとしても、力が入らないようでなかなかうまく持てない。頭も後ろから押さえていないとスーッとひっくり返ってしまいそうになる。おじいさんは血の気がひき顔面蒼白だ。どこか様子がおかしいと銀行員は動画を撮影し……。
4月以降、ブラジルのSNS上で「Tio Paulo(パウロおじさん)」の動画が拡散している。リオデジャネイロ州で発生した猟奇的な事件がきっかけだ。
4月16日、ブラジル・リオデジャネイロ州西部の町、バング地区にある銀行に車椅子に乗ったパウロ・ロベルト・ブラガさん(68)が来店した。事前に手続きを進めていた1万7千レアル(50万円超)を引き出すためだ。車椅子に乗るパウロさんは、付き添いの親族の女性と来店した。カウンターの前にきたものの、パウロさんの顔面は蒼白で、自らの意志で動く様子は終始いっさい無い。
「ねえ、サインしなきゃいけないんだよ。私が代わりにはできません」「ペンをしっかり握って」
親族の女が「パウロおじさん」と呼びかけながらペンを握らせることに夢中になっていると、パウロさんは後頭部から後ろに倒れそうになる。
「いつものことなの」
スペイン・エルムンド紙によると、当初、銀行の従業員は「老人がとても衰弱しているのではないか」と不安になり動画を撮り始め、パウロさんと女の様子が拡散されるきっかけとなった。