近年、鎮痛剤や生活習慣病の治療薬といった身近な薬にがんリスクを減らす“ポジティブな副作用”がある可能性が続々と報告されている。
今年4月には、市販薬でもおなじみの解熱鎮痛剤のアスピリンに大腸がんの予防効果が期待できることがわかった。イタリア・パドバ大学病院の研究では、毎日アスピリンを服用している大腸がん患者は、リンパ節への転移が起こる割合が低く、腫瘍への免疫反応も強かったという。
2016年にも、横浜市立大学先端医科学研究センターは、糖尿病治療薬のメトホルミンを服用することで、大腸ポリープ切除後の新規ポリープ発生を抑制できると、世界で初めて発表した。東京大学医学部附属病院放射線科特任教授でがん専門医の中川恵一さんが言う。
「米テキサス大学の報告でも、服用によって膵臓がんリスクが62%も低下したほか、肺がん、大腸がん、乳がんなどの抗がん効果があったとする臨床研究結果もあります」(中川さん)
図らずも“抗がん作用”が発見された薬がある一方で、糖尿病治療薬のピオグリタゾンは、2年以上連用することで男性の膀胱がんリスクが約1.4倍になるほか、一部の抗コレステロール薬は5年以上の連用で肝臓がんリスクが下がる一方、膵臓がんリスクは上がるという報告もある。
「薬によるがんリスクの低下はあくまでも“副作用”的な働きであるのはもちろん、がんリスクを上げる可能性があるとされる薬は、それ以上に薬効が重要だからこそ処方されるのです。秋津医院院長の秋津壽男さんが言う。
例えば、低用量ピルは乳がんのリスクを上げることが指摘されていますが、処方の際はこまめに乳がん検診を受けるよう必ず指導される。くれぐれも、自己判断で服用をやめたり増やしたりはしないでください」(秋津さん)
※女性セブン2024年5月23日号