中朝国境地帯の鴨緑江に面した北朝鮮の両江道恵山市の孤児院で今年2月、7人の乳幼児が新型コロナウイルスに感染したと報告されていたが、実は栄養失調状態だったことが分かった。警察当局が調べたところ、孤児院の職員が乳幼児に提供されている食糧を盗んでいたことが明らかになった。孤児院の組織ぐるみの犯行で、付近の住民から職員らに激しい非難の声が上がっている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
警察の調べに対して、院長や職員らは新型コロナウイルスの流行発生時から食糧不足が深刻化してきたため、乳児に与える牛乳や米などを横領し、その代わりに、トウモロコシの粉と砂糖を混ぜたものを食べさせていたという。また、職員らが定期的に食糧の供給当局者に賄賂を送っていたことも判明した。
警察当局は今年2月、孤児院から乳幼児死亡の報告を受けていたが、「栄養状態が悪く、やせ細っており、しかも7人が同時期に死亡するのはおかしい」として捜査を開始。
職員が実態を白状したため、今年4月27日、経理部門と医療部門の責任者を逮捕した。同院の栄養士4人も逮捕され、逮捕者数はさらに増える見通しだ。ただし、いまのところ、孤児院の院長と孤児院担当の朝鮮労働党書記は逮捕されていないという。
北朝鮮では2015年以降、すべての道(県に相当)の主要都市に保育所と孤児院を建設したが、当初から「子どもたちの栄養管理が不十分で、多くの問題を抱えている」との指摘も上がっていたという。金正恩党総書記は2021年、これらの子供たちに十分な乳製品を与えるように命じていたが、末端まではとても行き届いていない実態が浮き彫りになった形だ。