告別式に多くの芸能人たちが集まり、沿道を埋め尽くしたファンからは何度も「ヒデキ!」と呼びかける声。あの日から6年。『ブルースカイ ブルー』が流れる中、涙を拭うことなく棺を運んだ少年は、亡き父の背中を追い続けていた。
5月16日。新緑まぶしい季節になると、ふと、かの昭和の大スターを思い出す。今年は西城秀樹さん(享年63)の七回忌。まだ未曽有のコロナ禍も知らなかった平和な日常に、突然の訃報が駆け巡り、日本中が驚きと悲しみに暮れたのは、2018年のことだった。
当時、東京・青山葬儀所での告別式で位牌を抱え、涙を流していた中学生の長男は20才になった。西城さんが残した2男1女の長男、木本慎之介。この3月から芸能事務所に所属、公式YouTubeもスタートさせ、歌手デビューに向け大きな一歩を踏み出した彼が、意気込みを語った。
「よく母親似と言われます。父に似てるパーツは目ですかね」
落ち着いたたたずまい、体育会系の礼儀正しさ、歌謡曲好き、「さんずいの漢の字が似合う男になりたい」と明かす価値観からは、令和の空気は感じられない。むしろ古い香りがする。
「それ、すごくうれしい言葉です! 昭和っぽいねとか、古いですねって言われたいんです」
喜ぶ笑顔は完全にいま風のイケメンなのに、その言葉や内面からは、どこか懐かしさを感じるといったら、センチメンタルすぎるだろうか。昨年11月、ヒロミ(59才)主催の音楽フェス『ハチオウジダマシイ Festival&Carnival2023』に、とんねるずの木梨憲武(62才)のバックコーラスで参加。初めて公の場に登場すると、“ヒデキJr.”として瞬く間にニュースとなった。
3年前の高校2年生のとき、それまで目指していたプロサッカー選手の夢を諦めて音楽の道で生きる決意をした。
「それからはドラムとボーカルの練習を積んできました。そんな中、実際にプロのステージに立ってみて、メディアにも取り上げてもらったことで、自分の中で(プロへの)スイッチが入ったんです。年が明けた1月には、大好きだった朝倉未来さん(31才)が作られた芸能事務所に、自分から履歴書を送りました」
有名な歌手もタレントもいない、格闘家兼YouTuberの朝倉が経営する新興事務所に、自ら応募したという。
「何もかもお膳立てしてもらう生き方に魅力は感じられないんです。逆に、未来さんは全くの無名の立場から、自分の腕1つで格闘家としてもYouTuberとしても、会社経営者としても成功された。そんな姿に憧れていたし、ここなら自分の可能性もいっぱい出せるんじゃないかなって。
芸能事務所としてまだ小さいと言われるならば、自分の活躍で大きくしたい!って思っています。芸能界に入れば、父の名前が付いて回るのは覚悟の上。でも、そこに頼ることはしたくなかったんです」