韓国の40代以上を中心に幅広い世代がハマり、一大ブームを巻き起こしているのが“トロット”。どこか懐かしく、日本の演歌や昭和歌謡に通ずるメロディーで、「一度聴いたらやみつきになる」という人も多いという。さらに最近はドラマの挿入歌にも使われることが多いという。街の食堂でもトロットの音楽が有線から流れ、トロットを扱う番組の数は10を超えるとも。なぜ、これほどブームとなったのか?【全3回の第2回。第1回を読む】
いま韓国で人気のトロット歌手は、オーディション番組やのど自慢番組で才能を見出されデビューした人が多い。日本人トロット歌手・MARIKOも、2008年から韓国ののど自慢に出演し、トロット歌手として2016年にデビューを果たしたひとりだ。
「私がトロット歌手を目指すようになった頃にも韓国ではトロット歌手を発掘するような番組がありました。代表的なのが、韓国のテレビ局KBS『全国のど自慢』です。日本でいえば、『NHKのど自慢』のような番組で、プロアマ問わず参加できる番組です。私は2005年に初めてその番組を見てトロットのワクワクする明るいメロディーにハマったのですが、当時も中高年を中心によく歌われていました」(MARIKO・以下同)
近年、韓国ではENHYPENを輩出した『I-LAND』(2020年)など、数々のオーディション番組が人気を博しているが、トロット歌手を発掘するオーディション番組は、とりわけ人気が高いという。
「2019年に始まった女性トロット歌手を発掘する番組『明日はミス・トロット』は、視聴率1桁台が当たり前のケーブルテレビの放送ながら視聴率18%を超える人気番組となっていました。その後、男性版の『明日はミスター・トロット』が始まり、その最高視聴率は驚異の35%超! 一躍トロットブームになりました」
なぜ、トロットに特化したオーディション番組が誕生したのか。番組を手掛けた韓国の音楽事務所「n.CHエンターテインメント」代表プロデューサーのチョン・チャンファンさんは、次のように説明する。
「韓国では、2010年頃から若い人向けのK-POPの人気が高く、熱狂的なファンも多いのですが、40〜50代が熱狂できる音楽がなかなかなかったんです。そこで大人がもっと聴ける音楽を世に出そうと考えたときに、韓国に昔からあるトロットに着目し、多くのトロット歌手を輩出しようと考えたのです」(チョンさん・以下同)
これが功を奏し、トロットは中高年層を中心に爆発的な人気を獲得する。
「50〜70代には昔懐かしい曲調で、なじみがあるからコンサートに行っても楽しい。そこからファンクラブに入って、みんなで応援したいという気持ちになり、中高年層を中心にトロットがブームとなりました。いまでは若い人も興味を持ってくれているのがうれしいですね」
オーディション番組をきっかけに、イム・ヨンウン(32才)がブレーク。中高年の間ではBTS以上といわれ、チケットを取ることが困難になったため、「イム・ヨンウンのチケットが取れたら、最高の親孝行」と言われるまでになっている。