ライフ

消費者団体の訴えで美容クリニックがキャンセル料規定を削除、手術代金全額など求めるのは「無効」と差止請求、 消費者被害防止ネットワーク東海がアネシス美容クリニックと協議

キャンセルに伴う金銭の問題が頻発している(写真/イメージマート)

キャンセルに伴う金銭の問題が頻発している(写真/イメージマート)

 施術を受ける利用者が何らかの事情によってキャンセルする場合もあるが、キャンセル料が高すぎる場合には注意が必要だ。

 今回、美容クリニックが求めていたキャンセル料の規定が法律に違反する可能性があると指摘され、削除されたことが分かった。

 消費者庁が2024年5月10日に、消費者団体訴訟制度に基づく差止請求の事例を報告した。

キャンセル料規定の問題点

 これは、アネシス美容クリニック(名古屋市)のキャンセル料が消費者契約法に違反しているとする消費者被害防止ネットワーク東海(名古屋市)の指摘を受けての対応で、消費者団体訴訟制度(注:内閣総理大臣が認定した適格消費者団体が、被害者の利益を擁護するために、差止めを求めるなどの権限を与えられる制度)に基づく差止請求によるものだ。

 消費者被害防止ネットワーク東海は、アネシス美容クリニックが発行する「お見積書」および「手術予約のキャンセルについて」と題する書面のキャンセル料の規定が問題であるとして改訂を求めた。

 具体的には、キャンセル料が予約金の100%、または手術代金全額と定められ、これが契約解除の事由や時期を問わず一律である点が問題視されていた。契約の文面は次の通りだ。

・お見積書
※万が一、お客様自身の都合により手術日をキャンセルや延期されますと、キャンセル料が発生してしまいます。身内の不幸や、本人の病気、交通事故などのいかなる事情においてもキャンセル料は発生致します。キャンセル料の金額は予約金100%となります。

・「手術予約のキャンセルについて」と題する書面
手術日の決定以降に手術のキャンセルや手術内容の変更、手術内容のキャンセル、または手術日程を延期されますとキャンセル料が発生致します。キャンセル料の金額については手術代金全額となりますので何卒ご了承願います。

 消費者契約法第9条第1項第1号によれば、契約解除に伴う損害賠償の額が平均的な損害を超える場合、その超過部分は無効と規定されている。今回のケースでは、キャンセル料が平均的損害を大幅に上回る可能性があることから、この規定に当てはまるとされた。

 消費者被害防止ネットワーク東海は2023年9月26日にアネシス美容クリニックに対して申し入れを行い、その後、クリニック側が問題のキャンセル料規定を削除したことを確認した。これにより、消費者被害防止ネットワーク東海は2024年1月23日に申し入れを終了した。

キャンセル料のトラブルは年間3万件を超える

 ヒフコNEWSで伝えているが、美容医療を含めた解約の問題は広く注目されている。消費者庁の調査によれば、キャンセル料の支払いに不満を持つ消費者は、過去1年間に解約を経験した人のうち6割に上っていることが明らかになっている。毎年解約料に関するトラブルは3万件を超えている。商品・サービス別に見ると、脱毛エステが7位で、美容医療を含む医療サービスが12位となっている。

 今回の規定が削除されたケースで分かるように、キャンセル料は「平均的な損害額」を超える部分は無効になることが定められている。一方で、解約料のルールは複雑で現在、国でも解約料についてのルール作りが進んでいる。

 美容医療を利用する際にも、キャンセル料が高すぎると見られる場合は、注意が必要だ。

参考文献

消費者被害防止ネットワーク東海とアネシス美容クリニックとの間で差止請求に関する協議が調ったことについて

解約料実態の検証が始まる、「キャンセル料に不満」が6割、美容医療関連も、消費者庁が研究会

20代の消費生活のリスク、解約にも落とし穴、美容医療でも大きな問題、最新消費者庁調査が示す

突然閉鎖された大阪の脱毛エステ「ラドルチェ」のトラブル、一体何が?消費者支援機構関西が訴訟を提起

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

ヒフコNEWS

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

関連キーワード

トピックス

赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
前回のヒジ手術の時と全く異なる事情とは(時事通信フォト)
大谷翔平、ドジャース先発陣故障者続出で急かされる「二刀流復活」への懸念 投手としてじっくり調整する機会を喪失、打撃への影響を危ぶむ声も
週刊ポスト
単独公務が増えている愛子さま(2025年5月、東京・新宿区。撮影/JMPA)
【雅子さまの背中を追いかけて単独公務が増加中】愛子さまが万博訪問“詳細な日程の公開”は異例 集客につなげたい主催者側の思惑か
女性セブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン
大の里の調子がイマイチ上がってこない(時事通信フォト)
《史上最速綱取りに挑む大関・大の里》序盤の難敵は“同じミレニアム世代”の叩き上げ3世力士・王鵬「大の里へのライバル心は半端ではない」の声
週刊ポスト
連日お泊まりが報じられた赤西仁と広瀬アリス
《広瀬アリスと交際発覚》赤西仁の隠さないデートに“今は彼に夢中” 交際後にカップルで匂わせ投稿か
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎ストーカー殺人事件》「テーブルに10万円置いていきます」白井秀征容疑者を育んだ“いびつな親子関係”と目撃された“異様な執着心”「バイト先の男性客にもヤキモチ」
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン
成田市のアパートからアマンダさんの痛いが発見された(本人インスタグラムより)
《“日本愛”投稿した翌日に…》ブラジル人女性(30)が成田空港近くのアパートで遺体で発見、近隣住民が目撃していた“度重なる警察沙汰”「よくパトカーが来ていた」
NEWSポストセブン
小室圭さんの“イクメン化”を後押しする職場環境とは…?
《眞子さんのゆったりすぎるコートにマタニティ説浮上》小室圭さんの“イクメン”化待ったなし 勤務先の育休制度は「アメリカでは破格の待遇」
NEWSポストセブン
食物繊維を生かし、健全な腸内環境を保つためには、“とある菌”の存在が必要不可欠であることが明らかになった──
アボカド、ゴボウ、キウイと「◯◯」 “腸活博士”に話を聞いた記者がどっさり買い込んだ理由は…?《食物繊維摂取基準が上がった深いワケ》
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
NEWSポストセブン