大相撲5月場所は、初日に黒星を喫した横綱・照ノ富士と大関・貴景勝が翌日から休場すると、カド番大関の霧島も6日目までに1勝5敗となり7日目から休場した。関脇の若元春も右足親指の負傷で7日目から休場(11日目から再出場)。初日から休場していた小結・朝乃山も合わせて、一時は三役以上9人中5人が取組から消えるという異常事態となった。そうしたなか存在感が大きくなっているのが、千秋楽を優勝争いのトップで迎え、史上最速となるデビュー7場所目での優勝が目前に迫る新小結・大の里だ。
三役以上が5人休場するのは2018年11月場所以来のこと。同場所では3横綱、1大関、1小結が休場し、小結の貴景勝が12勝3敗で優勝している。相撲ジャーナリストが言う。
「横綱・稀勢の里(当時)は翌年の1月場所も初日から3連敗して引退。その場所は残る横綱の白鵬、鶴竜も途中休場で、大関陣の高安、豪栄道、栃ノ心も総崩れの番付崩壊となり、34歳の小結・玉鷲が初優勝。新大関、新横綱の誕生が急務となった。
そうしたなか、2019年1月場所までの3場所で『小結9勝→小結12勝(優勝)→関脇11勝』で3場所32勝だった貴景勝の大関昇進の議論がされたほど。強引にでも昇進させようという声があった一方、相撲内容の問題や、貴景勝が執行部と対立して2018年に退職した貴乃花親方の弟子だったこともあって見送りとなった。
翌2019年3月場所の貴景勝は関脇で10勝5敗の成績で、『三役で3場所33勝』になったことで大関に昇進したが、カド番大関の栃ノ心が負け越して大関を降格したことも追い風となったとされる。昇進にはその時々の“相撲協会の都合”が反映されるものなのです」
相撲協会の期待が一極集中している
今場所も番付崩壊が進むなか、カド番大関の霧島は途中休場で陥落が決まった。首のヘルニアの持病がある貴景勝も来場所は9度目のカド番となる。両膝に爆弾を抱える横綱・照ノ富士は横綱在位17場所で10度目の休場で、いつ引退してもおかしくない状況だ。
そんななか、初の賜杯が目前に迫る快進撃を見せるのが新小結・大の里だ。初日に照ノ富士を破ると、霧島、琴櫻を撃破。11勝3敗の優勝争い単独トップで千秋楽を迎えた。入幕3場所目ながら、大関、そして横綱への昇進の期待がかかるのは当然だろう。