田中教授によると、日本国内で300万人以上が感染して“国民病”ともいわれた国内最大級の感染症・肝炎も、ここ20年間で半分以下の130万人ほどまで感染者数が減少。感染予防対策やワクチン、治療効果の高いC型肝炎治療薬の発見による成果で、広島県内では同様に約11万人から約6万人まで減ったという。
「肝炎ウイルス検査の受検が進んでいて、肝炎の感染に気付いていない方は県内に1万人ほどしかいないのではないかと考えられます。広島県では肝炎の知識や情報を提供して受検や受診を推奨し、患者さんの相談窓口となる『肝疾患コーディネーター』の育成も全国トップレベル。さらなる減少を目指して、これからも率先して対策を進めていきます」(田中教授)
続いて陽性者へのフォロー体制など広島大学病院から詳細な報告が続くと伍代の表情もみるみる明るくなり、「広島県が全国で最初に肝炎ゼロを達成するのでは」と声を弾ませ、期待を寄せた。
◆自分の体に責任を持つか持たないか
伍代自身、30年ほど前にC型肝炎を治療して克服した経験がある。肝炎ウイルスの感染を知ったきっかけは“たまたま受けた”健康診断だったという。
「長期公演を控えた、念のための血液検査で知りました。陽性だとわかって『肝臓がそんな状態なら体がだるいでしょう?』と聞かれても、まだ若く健康に自信もあって、全然ピンとこなかった。でも、もしもあの時に検査をしていなかったら……不調だから検査に行ってみよう、とは思わない。それが肝炎なんです」
肝炎がどういう病気か身をもって知っているからこそ、伝えられることがあると伍代は考えている。
伍代自身、検査後10年の経過観察を経て、C型肝炎の治療に1年半を費やした。「治療に伴う副作用で発熱やだるさが続いて、脱毛もちょっとありました。歌う仕事なので貧血になって呼吸が苦しくなるんです。1年は頑張れましたが、難しい型で治療が長引き、自分には絶対ないと信じていたうつ症状が出てきました。
いつもなんとなく倦怠感があって、やる気が出ない。精神的にぎりぎりでした。私もつらかったですが見守る夫(杉良太郎)も大変だったと思います」