放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、現在の「東京喜劇王」伊東四朗と、「浪花のモーツァルト」キダ・タローについて綴る。
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中年層にも少し希望を与える漫才の『THE SECOND』。出てくる連中はみな40前後。がっついてないから見やすくていい。『M-1』もいいけど短い時間でピリつきながら闘っているから見てて息苦しい。その点キャリア20年なんて連中は落ち着いてて全員が面白かった。
あまりテレビの中に「芸」は求めないのだが、どの組も磨きあげた「芸」と「実績」があったのにびっくり。「ガクテンソク」の優勝は文句なしだが、敗れた「ザ・パンチ」が久し振りすぎて大笑いしてしまった。16年ぶりに聞いて嬉しかった「砂漠でラクダに逃げられて~ッ」。あれが流行った頃(流行ったのか?)面白くて何回も私のラジオに来てもらった。たしかパンチ浜崎じゃなくてノーパンチ松尾の方が神楽坂近くの呉服屋の息子で、近いので私も何回かここで着物を仕立てたことがある。どこか親しみがわく。君らの人生も「お願いセカンドで優勝に逃げられて~ッ」
「芸」といえば現在の東京喜劇王・伊東四朗(もうすぐ87歳)。久しぶりにスタジオでお会いしたがさすが現役、きっとタフマンが効くのだろう。6月2日から三宅裕司の「熱海五郎一座」でなんと1か月近く「新橋演舞場」の舞台に立つ。東京の“笑芸”ファンの間では今その話題でもちきりである。
そんな折も折、まだ44歳という若さでとことん伊東四朗のことを調べあげちゃった男がいる。笹山敬輔なる人物で以前にも『昭和芸人七人の最期』『ドリフターズとその時代』など入魂の書を出している。で、今回は『笑いの正解 東京喜劇と伊東四朗』(文藝春秋)。何回か当人に取材のインタビューはしたらしく「高田さんの前だけどネ、いやぁ~アタシよりアタシのことが詳しいんだ」とおどろきのニンッであった。若い人が古い人の話をきいておくというのが大切なことなのだ。
「浪花のモーツァルト」であり『探偵!ナイトスクープ』の最高顧問だったキダ・タローが死去した。誰からも愛されるあの人柄がほほえましかった。「アホの坂田」やらCM「かに道楽」「日清出前一丁」など5000曲を量産。その中に歌謡曲のヒットソングもあって古い人は分かるだろう北原謙二の『ふるさとの話をしよう』。甘ずっぱい、いい曲。立川談志がこの曲が大好きで、新年会などで皆なが集まるとこれを一同で合唱した。噂をききつけ翌年、北原謙二が宴席にやって来たことがある。
※週刊ポスト2024年6月7・14日号