チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世が率いるチベット亡命政府(インド・アルナチャルプラデシュ州ダラムサラ)からの報告によると、中国四川省のチベット人居住区であるガンゼ・チベット自治州ゲルデ県に住むチベット族2000人が、ダム建設のための立ち退き命令に抗議して集会を開いていたところ、警官隊によって鎮圧され、1000人以上が逮捕されたという。
この地域には13世紀に建てられた歴史あるチベット仏教僧院が6軒あるほか、伝統的なチベット族の建築物も多数あり、この地区のチベット族住民たちは立ち退きに抗議し、居住区と僧院を取り壊さないよう地方政府当局に嘆願していた。
しかし、警察当局は銃を発砲して住民を射殺したほか、デモ参加者を殴打するなどして多数の死傷者が出た。当局側が強硬手段に出たことを受けて、チベット亡命政府はダム建設を即刻停止し、逮捕されたチベット族住民を速やかに釈放するよう中国政府に厳重に抗議している。
今回の事件とは別に、国際的な人権団体「ヒューマンライツウオッチ」は、中国のチベット自治区などのチベット人居住区において、2016年からこれまで、約500カ所の村落に住んでいたチベット人住民14万人以上が強制移住させられたことを報告している。
中国政府はチベット人居住地域でのダム・水力電源開発を進めており、こうした事例が今後とも増加していくことが懸念される。