劇団四季の新作オリジナルミュージカル『ゴースト&レディ』の舞台は、良家の子女が看護婦になることなど許されなかった時代。クリミア戦争で人々が命を落とす惨状を見かねたフローレンス・ナイチンゲール(フロー)は、看護婦として戦地に赴くことを志願するが、周囲の理解が得られず、死を思い詰めるまでに。
それでも、時にゴーストのグレイに助けられながら信念を貫き、世間の風向きを大きく変えていく。そしてグレイもまた、彼女から好影響を受けずにいられない。
人間はなぜこんなに欲深くこんなにも弱いのか。なのになぜ、こんなにも強く、何度踏みにじられても立ち上がれるのか。なぜ自分よりほかの誰かを大切にできるのか。なぜ──。
亡霊と貴婦人の物語は、見る者にさまざまな感情を思い起こさせる。そして、人間の味わい深い多面性をあらためて教えてくれる。
◆劇団四季ミュージカル『ゴースト&レディ』
19 世紀の英国。ドルーリー・レーン劇場に棲みつくシアター・ゴーストのグレイの元を訪れ、「私を殺してほしい」と嘆願する令嬢フロー。彼女は看護の道に強い使命感を抱くも、家族からの反対に抗えず、生きる意味を見失っていた。「絶望の底まで落ちたら」とグレイはその願いを承諾し、フローは死を覚悟したことで看護の道を貫き、グレイとともにクリミア戦争下のスクタリ陸軍野戦病院へと赴く。しかしそんなフローを良く思わないジョン・ホール軍医長官と、その傍らにはグレイと生前から因縁のあるゴースト・デオンが立ちはだかるのだった。
■2024年11月11日まで東京・竹芝の JR 東日本四季劇場[秋]にて上演中
撮影/五十嵐美弥、上原タカシ 取材・文/辻本幸路
※女性セブン2024年6月13日号