ライフ

【新刊】選手と中継スタッフの入れ子細工ドラマ、池井戸潤氏『俺たちの箱根駅伝』など4冊

キャプション
選手と中継スタッフの入れ子細工ドラマ。こんなに面白くっていいの!?

選手と中継スタッフの入れ子細工ドラマ。こんなに面白くっていいの!?

 家で過ごす時間が増える梅雨の時期には、読書をしてみるのはいかが? いまチェックしておきたいおすすめの新刊を紹介する。

『俺たちの箱根駅伝』/池井戸潤/文藝春秋/上下巻各1980円
 前のめりで読んでしまう。本選出場を逃し学生連合チームのメンバーとして箱根に挑むことになった明誠学院の4年生隼斗(他大学は青学や中央など実名多し)。伝統の中継に奔走するテレビ局スタッフ。前者には新監督への不信感や選手間の確執があり、後者には主要アナの病欠や駅伝のバラエティ化を目指す介入などが。選手も映像チームも改めて讃えたくなる圧巻の面白さ。

社会や情報が「これが幸せ」と煽ってくるものを自分の中で精査する(本文より)

社会や情報が「これが幸せ」と煽ってくるものを自分の中で精査する(本文より)

『幸せへのセンサー』/吉本ばなな/幻冬舎/1650円
 デビュー時の吉本さんは“きらきらした才能の新世代作家”。でも年月を重ねると世代なんて関係ないわね。多忙過ぎる作家生活やご両親の介護などを経て、自分の中で発酵させたシン幸福論。弱っているときは無理しないとか、欲望とのつきあい方で幸福度は変わるなど、真理だなと思う。オーディオブックの活字化。千葉雄大朗読のアマゾン配信「オーディブル」も強力に推す。

ウルドは現地でもらったミドルネーム。印税や賞金など善きお金の使い方にもウルッ

ウルドは現地でもらったミドルネーム。印税や賞金など善きお金の使い方にもウルッ

『バッタを倒すぜ アフリカで』/前野 ウルド 浩太郎/光文社新書/1650円
 前作『バッタを倒しにアフリカへ』はポスドク青年の西アフリカ研究生活を描いて超弩級の面白さだった。25万部も売れたとは(受賞多数)。さて続編の本書も多彩な裏話や自分の婚活難などをぶち込み、後半で「これまでのあらすじ」を書いて大目的であるサバクトビバッタの集団別居仮説に立ち戻るという脱線っぷり。あっという間の爆笑読書。今年前半、太鼓判の収穫作です!

さっと茹でて醤油で和えた露草の美味。白砂糖を染めれば青い月草(露草)糖に

さっと茹でて醤油で和えた露草の美味。白砂糖を染めれば青い月草(露草)糖に

『月草糖 花暦 居酒屋ぜんや』/坂井希久子/ハルキ文庫/704円
 神田の居酒屋ぜんやにまつわる季節料理と人情シリーズ第6弾。今回の“やきもき”は深川の女郎お万に惚れられた薬種問屋の奉公人熊吉を巡る騒動だ。むげにもできず、「友達になろう」と青臭いことを言って時々様子を見に行く熊吉からは白粉の匂いが。ぜんやのお花の心は穏やかではない。しかし業病になったお万は姿を消し……。熊吉とお花のウブな恋の行方を見守りたい。

文/温水ゆかり

※女性セブン2024年6月13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
3月末でNHKを退社し、フリーとなった中川安奈アナ(インスタグラムより)
《“元カレ写真並べる”が注目》元NHK中川安奈アナ、“送別会なし”に「NHK冷たい」の声も それでもNHKの判断が「賢明」と言えるテレビ業界のリスク事情
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
第一子誕生の大谷翔平、広告出演オファー殺到でスポンサー収入200億円突破も ベビー関連・ファミリー関連企業から熱視線、争奪戦早くも開始か 
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
金メダル級の演技(C)NHK連続テレビ小説「あんぱん」NHK総合 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
朝ドラ『あんぱん』で“韋駄天おのぶ”を演じる今田美桜の俊足秘話 「元陸上部で中学校の運動会ではリレーの選手に」、ヒロイン選考オーディションでは「走りのテスト」も
週刊ポスト
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
(撮影/田中麻以)
【高市早苗氏独占インタビュー】今だから明かせる自民党総裁選挙の裏側「ある派閥では決選投票で『男に入れろ』という指令が出ていたと聞いた」
週刊ポスト
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン