5月31日に行われた叡王戦5番勝負の第4局で、挑戦者の伊藤匠七段(21才)に勝ち、八冠陥落のピンチをひとまず脱した藤井聡太八冠(21才)。しかし、今後も難敵との戦いは続く。「叡王」のタイトルを守れるかどうかは、6月20日に山梨県甲府市で行われる第5局で決まる。
八大タイトルを独占する藤井は伊藤との対局だけに集中するわけにはいかない。最終決戦よりも前に、6月6日からは「棋聖戦」が始まり、山崎隆之八段(43才)の挑戦を受ける。
「山崎さんは2009年に王座戦で羽生さん(善治九段・53才)に挑んで以来、15年ぶりのタイトル戦です。
将棋界では、40代中盤にさしかかると実力をキープするのが難しくなるといわれています。それに加えて、山崎さんは今年3月に左目が緑内障と診断されました。棋士にとって視力は大切で、過去には視力の低下と比例して勝率が落ちた棋士がいるほどです。山崎さんは年齢のタイムリミットを意識していて、今回のタイトル戦を“最後の大舞台”と位置付けています。藤井さんとの一戦にかける思いも強い」(全国紙将棋担当記者)
山崎との対局は、藤井にとって未知の戦いになる。
「藤井さんがこれまでのタイトル戦で戦ってきた相手は、いわばトップ層の実力者ばかり。ですが、山崎さんはキャリア的にも第一線でバリバリ活躍してきたタイプではないんです。山崎さん自身もそのことを自覚していて、経験がないタイプの自分だからこそ、勝機はあると考えているようです」(将棋関係者)
7月6日から始まる「王位戦」の相手、渡辺明九段(40才)も厄介だ。渡辺はタイトルを獲得したこともあるトップ棋士だが、藤井の台頭で棋士人生が大きく変化したひとりでもある。
「2人は2020年の棋聖戦で、初めてタイトルを争いました。その対局で、藤井さんが勝利して棋聖を奪取。以降、保持していた3つのタイトルすべてを藤井さんに奪われました。トータルの戦績でも、渡辺さんは藤井さんに4勝20敗と大きく負け越しています。再戦でのタイトルの奪還に、並々ならぬ闘志を燃やしていることでしょう」(前出・全国紙将棋担当記者)
藤井と渡辺の関係性が、騒動を引き起こしたこともあった。
「今年5月に渡辺さんが参加したトークショーで、彼は一言も言っていないのに“藤井さんの不調の原因は、チェスにある”と渡辺さんが発言したという誤った情報がSNS上で広まったんです。渡辺さんは翌日“発言していない”と否定しなければならないほどでした。そうした誤情報が出るのは、それだけ2人の因縁が注目されている証ともいえるでしょう」(前出・全国紙将棋担当記者)
藤井の激闘は続く。
※女性セブン2024年6月20日号