【週刊ポスト連載・医心伝身】大腸の一部が、袋状に膨らむのが憩室だ。日本人の大腸憩室保有者は4人に1人と推計されているが、ほとんどは無症状である。しかし、便などが詰まり、炎症が起こると腹部の痛み、発熱、嘔吐などの症状がでる。絶食や抗菌薬などで治療するが、膿瘍や穿孔があり、腹膜炎を合併している場合には手術が必要になる。近年、患者は増加傾向で、特に高齢者は重症化しやすく注意が必要だ。
憩室は消化管に発生するが、特に多いのが大腸憩室だ。発症原因は不明だが、食物繊維の摂取が減少し、慢性的な便秘になることも発症原因のひとつに考えられ、結果的に近年の食生活の欧米化によって患者数が増加傾向にある。
その憩室は年齢を問わず発症し、複数個発生するケースが多い。ただし、ほとんどが無症状だったりする。また高齢者の憩室は大腸の左側に発生することが多く、右側よりも重症化しやすい。
慈恵大学病院下部消化管外科の大熊誠尚医師に聞いた。
「突然下血して来院される患者さんの中に大腸憩室から出血している方がかなりいらっしゃいます。結局は憩室内の血管が炎症などによって傷つけられ、出血が起こるのです。その場合、大腸がんなど他の病気の可能性もあるので、まずは大腸内視鏡検査を実施します。ただ憩室出血の大半が自然に止血する上に複数の憩室があるため、出血箇所の特定が難しいのが現状です。そして、治療は数日間の絶食を行ないます」
憩室出血よりも問題なのが大腸憩室炎だ。これは憩室に便などが詰まり、細菌が増殖、炎症が起こると下腹部の痛み、発熱、嘔吐などの症状をきたす。そのまま炎症が進んだ場合、腸管穿孔(穴があく)や膿瘍(膿が溜まる)が起こることもある。
憩室炎の検査はCTや超音波で行なうが、炎症が起こっている症例では憩室の壁の肥厚により判断される。この憩室炎の治療は膿瘍や穿孔があるかどうかで変わり、主に抗菌薬の投与、点滴で水分と栄養を補充しながら絶食し、大腸を安静に保つ。