ユーラシア大陸の中央部に広がる世界最大級の高原である青海チベット高原の湖群の水量が2100年にはいまより6500億トン以上増加する可能性があることが、中国や米国、フランスなどの科学者の研究チームによって明らかになった。湖の表面積も50%以上増加するかもしれないという。
この場合、水位はいまよりも10m以上も高くなる見込みで、現在ある615の村落が水没し、その経済的損失は最大で約500億元(約1兆1000億円)にも達する可能性がある。「ネイチャー・ジオサイエンス」(オンライン版)が5月下旬、研究チームの論文を掲載した。
「アジアの給水塔」としても知られる青海チベット高原は、世界で最も標高が高く、液体と氷の両方の形で水を大量に蓄えた湖が1000以上存在している。
科学者らは「青海チベット高原は気候変動に対して最も脆弱な地域のひとつであり、地球温暖化の影響を最も受けている」と指摘する。
世界の他の地域の大きな湖では、気温の上昇と人間活動の両方が原因で貯水量が減少しているが、青海チベット高原の氷河湖はここ数十年、温暖化影響で氷が溶け出している。高原には河川がほとんどないため、溶けた水はそのまま地表に堰き止められて、大地を侵食して、水位が上昇すると予想される。
その結果、道路や村落や草原、湿地、農地など約1万平方キロメートルが水没の危機に陥るという。これらの耕作地の損失は食糧生産を妨げ、地域の食糧安全保障と地域農業経済の両方に影響を与えることになりそうだ。さらにはこの地域の動植物など生態系への深刻な影響も懸念されるという。