「厳しい問いですね」
第1に、そもそも〈2300台不足する〉という予測は本当なのか。
大阪府のタクシー車両数は約1万7100台で、東京都の約4万1000台に次ぐ第2位(2022年)。
人口あたりの数字だと順位は10位になるが、鉄道が乏しく、タクシーに頼らざるをえない沖縄や北海道を入れてのことだ。
府ライドシェア事業推進グループの担当者に訊くと2300台の不足は「万博協会が昨年11月20日に発表した『大阪・関西万博来場者輸送具体方針(以下、輸送方針)』に基づく試算」と強調する。
ただ、吉村氏のRS推進が唐突だったためか、ちぐはぐなのは輸送方針そのものにRSの一文字も書いていないことだ。府担当者が続ける。
「輸送方針は、鉄道やタクシーなど各移動手段で分担すればピーク時も運べるとの内容になっています。ただ、ことタクシーを見ると、万博需要だけでなく、単純なインバウンドの増加もある。これらを合わせると、現在のタクシーの稼働状況では足りなくなる」
ここで浮かぶのが第2の疑問。それはRSで解決することなのか──。
そもそも混雑対策は、交通体系全体で考えるのが普通で、タクシーはその一部。しかも輸送方針のタクシー部分は、来場者2820万人のうちたった45万人分に過ぎない。
まずは他県のタクシーの増援を求めたり、動かせるところから議論し直すのが王道だろう。
しかし、府担当者から返ってきたのは、「輸送全体のことは万博協会に聞いてください」と縦割り丸出しの回答。これでは派手なRS推進で「改革」を打ち出すのが目的で、万博の輸送対策というのは口実にさえ見える。