第3は、かえって渋滞を深刻化させるリスクだ。
吉村氏はRS車の会場乗り入れに前向きだが、夢洲へのルートは1本の通り抜け道路のみ(別掲図)。車両数を増やして混雑を助長したら本末転倒ではないか。
そう疑問をぶつけると、府担当者は「2000台程度増えても、数百万台が走る大阪で、インパクトはありますか?」との返事だったが、万博協会交通局の部長のニュアンスはより実際的だ。
「渋滞要因になるかはボリューム次第ですね。一気に2300台が増えれば交通に負荷が生じるかもしれないし、日々の変動量の範囲に収まる可能性もある。国と大阪の協議の結論により影響は変わりますが、まだそこは見えていません」
万博協会は府市からの出向のみならず、国や民間からも人が入った混成部隊。その知恵を結集した輸送方針を読み直すと、発見もあった。
客が偏らないよう、予約制を取り入れ、企業にも通勤時間の変更を要請する。需要を「均す」という“引き算”の戦略が貫かれている。他方、吉村氏のRS施策は供給を増やす“足し算”である。
「思想が逆ですね」と聞くと、前出・部長は「うーん、なかなか厳しい問いですね」と独り言ちた。
本当に深刻な課題は後回し
吉村氏の打ち出す“改革”が現場の助けになるのか、交通分野の行政改革の実務家も首を傾げる。
関空、南紀白浜空港の民営化に携わり、現在は南紀白浜エアポート(和歌山県)の社長を務める岡田信一郎氏は「規制に風穴を空ける構えでしょうが、世の中の切実な課題とはミスマッチがある」と苦言を呈する。
地方では、タクシー運転手が高齢化。観光地の乗り場に行列ができ、住民の通院・買い物にも支障を来す「移動難民」が深刻化している。