本来、タクシーの規制を緩和して自家用車を活用する制度は約20年前、そうした地方の「交通空白地」のために始まった。が、制度は十分に活用されず「地方の変革」が進まずに、現在に至る。
昨年8月、菅義偉・前首相の解禁を求める発言から、都市を中心に日本版RSが動き出したが、より切実な「地方」ではこれからの話になる。前全国知事会長の平井伸治氏(鳥取県知事)は語る。
「大都市と違って地方は生活や命がかかっている深刻な状況で、大きな目で見た交通政策の仕組みが必要です。空白があるからと軽々に新規参入者を認めると、これまで支えてきた担い手が撤退するような事例もある。どうネットワークを守るかを考える必要がある」
RS推進のような“派手な改革”だけでは本当の課題は解決しないのだ。
大阪府下でも昨年12月、富田林市など4市町の足だった金剛バスが破綻。一部は他社が引き受けたものの、多くの枝線が消えた。この破綻を受け、吉村氏が「解決策」として言及したのは“万博印”の自動運転バスだった。万博会場外周などで使う技術を転用するという。海外では自動運転タクシーの相次ぐ事故などが絶えないなかで、本気で言っているのだろうか。
“派手な改革”に内実は伴っているのか──「高校完全無償化」や「0歳児選挙権」など、ぶち上げた政策が、その空疎さを指弾される事例が続く。こうしたことを繰り返す吉村氏の心中を前出・府の局長経験者が読み解く。
「“ババをつかまされた”という思いではないか。IRも万博も橋下徹・松井一郎の維新の創業者が風呂敷を広げるだけ広げた後の尻拭いです。せめて負でない正のレガシーを、と焦っているのでは」
吉村氏が派手な「改革」を求めるほど、その空疎さは際立つ。地味でも本丸の課題に向き合わなければ、流れは止まらない。
※週刊ポスト2024年6月21日号