日本では有名人を騙るSNS投資詐欺が急増しているが、中国では政府省庁や国有企業の幹部などになりすまして投資家を騙す詐欺事件が問題視されている。中国政府は、警察機関である中国公安省に対して、このような犯罪の検挙を最優先課題とするよう通達を出した。
同時に、中国財務省や農業農村省など20以上の中央省庁や国有企業も、このような投資詐欺は「共産党と政府のイメージを著しく損ない、社会・経済秩序を混乱させる」ことから、「撲滅キャンペーン」を行うと発表した。国家ぐるみで詐欺犯罪の取り締まりに乗り出している。
新華社通信などによると、中国東北部の山東省徳州市で起きた事件では、ある詐欺グループが「政府の後ろ盾がある」と称して286人の被害者から約2900万元(約63億円)をだまし取った。
中国国営放送テレビ(CCTV)によると、2023年5月に起きた別の事件では、国家の経済政策を立案する国家発展改革委員会(NDRC)のワーキンググループの幹部になりすました詐欺師が、地方政府関係者に最高100億元(2170億円)の補助金を得られるとの話をもちかけ、「(その省の)農村開発を進めているが、そのためには当座の資金として10億元(21億7000万円)が必要、しかし、すぐにNDRC本体から100億元の助金金が出るので心配ない。10億元もすぐに返すことができる」などと、10億元をだまし取る事件が発生した。
この詐欺事件により、同委はWeChatの公式アカウントで、「そのようなワーキンググループは存在せず、そのような政府補助金もない」などとの声明を出さざるを得なくなった。
また、中国公安省は「詐欺師らはAI(人工知能)も使い、ますます洗練された技術を使う金融犯罪を行っている」としたうえで、詐欺師たちは頻繁にメディアに登場する知名度の高い政府高官そっくりの動画を作成するなど、詐欺の手口が巧妙化していると指摘している。