ライフ

【新刊】メフィスト賞受賞の快作『死んだ山田と教室』、アラサーで迎える青春を描く『告白撃』など4冊

単行本デビューが約束されたメフィスト賞受賞の快作

単行本デビューが約束されたメフィスト賞受賞の快作

 まもなく梅雨シーズンが到来。雨が続き気分が落ち込みやすい時期こそ、読書で気分転換してみてはいかがだろう。おすすめの新刊を紹介する。

『死んだ山田と教室』/金子玲介/講談社/1980円
 交通事故で死んだ男子校二年E組の山田。が、教室のスピーカーから彼の陽気な声が。自分が死んだことを知らされると「うわぁ〜まじか〜最悪だ」。教室に笑いが広がる。クラスを盛り上げる達人で人気者だった山田。しかし同級生達も卒業し大学へ。事故の真実、山田の核心。スピーカーに閉じ込められた孤独な彼を誰が解放するのか? 納得するけど、こんなラストは嫌(泣)。

大学時代の仲間達がアラサーで迎える大人の青春

大学時代の仲間達がアラサーで迎える大人の青春

『告白撃』/住野よる/KADOKAWA/1650円
 会社の同僚と婚約した29歳の千鶴。仲間を式に招待するに当たり、親友響貴が自分への思いを断ち切り、濁りのない気持ちで出席してくれないかと願う。そのために彼を完全失恋させねば。かくして告白させる作戦を展開するが…。失恋話をさんざん響貴に聞いてもらってきた千鶴。その際に響貴の胸を射ぬいた言葉。複雑な心の揺れの物語だが、未来に向かう友情にちょっと胸アツ。

異変か狂気か? ゆったりした文体に潜む切迫感

異変か狂気か? ゆったりした文体に潜む切迫感

『水たまりで息をする』高瀬隼子/集英社文庫/594円
 東京で暮らす30代半ばの共働き夫婦。夫は最近お風呂を使った形跡がない。聞くと「風呂には、入らないことにした」と。水道の水がくさくて痛いとひっそり呟く。夫の異変は昂進し、ついには会社も問題視。先の読めないスリリングさ(芥川賞候補作)。体臭、ミミズの生臭さ、潮の香などに嗅覚を刺激され、ラストの水のイメージは圧倒的。妻の言えなかった一言が胸に痛い。

新天地を恐れず、自分を“破って”生きてきた冒険者

新天地を恐れず、自分を“破って”生きてきた冒険者

『岸惠子自伝 卵を割らなければ、オムレツは食べられない』岸惠子/岩波現代文庫/1210円
 副題の「卵を〜」はフランスの諺で、何かを成し遂げようとしたら多少の犠牲(痛み)が伴う、というような意味。名エッセイストとしても知られる著者が生地横浜と家族、仏人監督と結婚したパリでの異文化体験、離婚後に国際ジャーナリストとして鍛えた視野などを語る。国際的女性という言い方では足りない“生のセンス”にただ脱帽。文章にもキリッとした美しさがみなぎる。

文/温水ゆかり

※女性セブン2024年6月27日号

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン