北朝鮮と国境を接する中国吉林省では中国人民武装警察部隊が北朝鮮で製造された覚醒剤の密輸を阻止するため、国境警備隊を大幅に増員して警備を強化、北朝鮮の密輸業者数人をすでに逮捕していたことが分かった。これらの覚醒剤は対岸の北朝鮮咸鏡北道の化学工場で製造されているとみられる。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
中国の吉林省延辺朝鮮族自治州では雪解けの今年春ごろから、国境を接する図們江を渡ってきた北朝鮮の麻薬密売グループが暗躍し、覚醒剤のアンフェタミンやメタンフェタミンが中国側に流入していることが発覚し、中国の密輸業者らが摘発される事件が起きた。
このため、中国の武装警察部隊が今年5月中旬から、小型高速艇なども動員して図們江沿いのパトロールを強化。その結果、数人の北朝鮮の密輸業者も検挙されているという。
業者の供述によると、覚醒剤は図們江をはさんで同自治州と対岸の北朝鮮の咸鏡北道にある大規模な化学工場で生産されている。
この工場ではアンモニアやメタノール、硫酸、硝酸などの化学品や各種日用品を生産しており、1990年代初頭には数千人の従業員を擁していた。しかし、その後の北朝鮮の経済危機のあおりを受けて、原材料を輸入できなくなり、生産は停止、いまでは火薬を製造する軍需工場のみが稼働していることが分かっている。
中国側は、摘発した業者らの証言などから同工場で違法に覚醒剤が製造されている可能性が高いとして、外交ルートで北朝鮮当局に違法薬物密輸取り締まりを要請するとともに、中国側の図們江沿岸に多数の国境警備隊を配置し、警戒を強めているという。