放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、向かうところ敵なしの阿部サダヲについて綴る。
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出版不況だというのに私だけ機嫌がいい。滅多に聞かない「増刷」の言葉。6月6日に発売した(何度も書いてすいません)『月刊Takada 芸能笑学部 丸ごと一冊高田文夫』が発売翌日には「増刷決定しました」の連絡。55年も“マスコミ商売”していればテレビで視聴率、ラジオで聴取率、出版だったら売り上げ部数というのが気になって当然。数字がいいに越した事はない。
そこへニコニコやってきた「向かうところ手品師」……いやっ元へ……「向かうところ敵なし」の阿部サダヲ。なんたってコンプライアンス問題に真っ向から挑んでいった『不適切にもほどがある!』が大評判の内にEND。他のラジオ・テレビに出てもニヤニヤしてるだけであまり喋らない男だが、私の前に来ると喋る喋る。往年のおすぎとピーコかと思った。
「チョメチョメにまた光を当ててくれて有難うな。クドカンにも阿部クンにも感謝してるよ」。あのチョメチョメは山城新伍の造語で『アイ・アイゲーム』の問題となっている「××」の伏せ字を「チョメチョメ」と言ったところから来ている。それが男女のナニを指すようになり『不適切』で大復活したのだ。毎回たくさんの問題を用意する「××問題」を考えていたのが若き日の私なのだ。
「年頃の娘がいるけどチョメチョメは大丈夫だった?」ときけば「毎週楽しみにオンタイムで喜んで見てました」だと。心配してたがホッ。作者のクドカンのところにもお嬢さんがいるが「チョメチョメ」が流れると少し沈黙が流れたようだ。
私の『ラジオビバリー昼ズ』(ニッポン放送)が35周年。「人生で感謝してる人は?」と問えば、阿部「この番組がスタートした頃、トラックの運転手やってまして、いつも昼に聞いてて、こんな明るい社会もあるんだなと。高田センセーにはいつも憧れてました。
『M-1』よりずっと前に“高田杯争奪OWARAIゴールドラッシュ”をやったでしょ。あれに出たくて……浅草キッドとか立川ボーイズ(談春と志らく)、江頭2:50、松村邦洋。吹越満さんは役者なのに“ロボコップ演芸”やってて、それで吹越さんのライブ行ったら“大人計画”の募集のチラシが入ってて、行ってみたら宮藤さんと松尾スズキさんに出会えたんです。生涯で感謝する人は2位が高田センセーで、1位が大人計画と松尾スズキさんかな」
その少し前、クドカンは私になりたくて「日芸」に入ったが友達もできず、早めにアパートへ帰っては私のラジオだけをじっと聞いていた。35年前の各々の青春である。
※週刊ポスト2024年6月28日・7月5日号