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映画『九十歳。何がめでたい』前田哲監督「軽薄に見えようが、ウエットにしたくないという自分の信条が、愛子先生の考え方とフィットした」

本作の映画化は草笛さんから相談されたという前田哲監督(c)2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (c)佐藤愛子/小学館

本作の映画化は草笛さんから相談されたという前田哲監督(c)2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (c)佐藤愛子/小学館

 佐藤愛子さんのエッセイを原作とした映画『九十歳。何がめでたい』が現在公開中だ。物語は、断筆宣言をした90歳の老作家・佐藤愛子(草笛光子)が女性誌『ライフセブン』の編集者・吉川真也(唐沢寿明)に連載を依頼されるところから始まる。何度断っても諦めない吉川に、破れかぶれの気持ちで再び筆を執り、90歳を過ぎて感じた時代とのズレや違和感、身体の衰えをユーモラスに綴ると、刊行した単行本『九十歳。何がめでたい』がまさかのベストセラーになって──という国民的エッセイ誕生までの物語。

 2021年公開の映画『老後の資金がありません!』で草笛さんとタッグを組んだ前田哲監督は、2023年の正月、草笛さんの家に招かれたときに「佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』を原作に映画にしたいのよ」と相談されたという。

草笛さんとのやり取りはまるで漫才のようだったと複数の出演者やスタッフから証言が。『老後の資金がありません!』から築く信頼の賜物。(c)2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (c)佐藤愛子/小学館

草笛さんとのやり取りはまるで漫才のようだったと複数の出演者やスタッフから証言が。『老後の資金がありません!』から築く信頼の賜物。(c)2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (c)佐藤愛子/小学館

「すぐに本を読んでみたんですが、すべてのエピソードが面白かった。みんながなかなか言えないことをズバっと鋭くついて、ユーモアに包んで書いている。何より生きてきた蓄積に裏打ちされているから強く響く。愛子先生の竹を割ったような潔い生き方ですよね。そこには草笛さんとの共通点も感じました。

 僕は、人生は残酷だからこそ映画で希望を描きたいと思ってきました。人から軽薄に見えようが、ウエットにしたくないという自分の信条が、愛子先生の考え方とフィットしたというか、何としても映画にしたいと思いました」

 監督自身、愛子先生とは2回会い、一度は膝をつき合わせて脚本について話をしている。

「やっぱり原作を読んだ人を裏切っちゃいけないと思うんです。全然形は違いますが、愛子先生の潔さや原作にあった愉快痛快な面白さ、読み終わった後、元気がわいてくる多幸感……僕がこだわったのはエンドロールです。

 愛子先生がいろんなものを背負ったり手放したり、苦労を苦労と思わず生きてきて、今100歳でいらっしゃること。人生にはいろいろありますが、何があっても生きていくしかないわけで、それをめでたいというか、草笛さんが演じ、愛子先生の写真を映した時に、誰の腹の底に落ちると思うんです。それはやっぱりふたりの凄さだと思います」

※女性セブン2024年7月4日号

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