中国・上海に隣接する江蘇省蘇州市で、事件は起きた。6月24日、日本人学校のスクールバスが刃物を持った中国人の男に襲われ、日本人の母親と未就学の男児がけがをしたほか、バスの案内係をしていた中国人女性も乗客をかばおうとして刺され、意識不明の重体となった。突然の事件によって翌日は学校が臨時休校に。6月26日になってから、安全対策を強化した上で学校が再開を決めた。
当初は事件の概要が明らかにされなかったが、事件翌日の25日、地元警察は52歳の無職の男を現行犯逮捕したと発表。中国外務省の報道官は同日、「偶発的な事件で、世界のどの国でも起こり得ることだ」と述べるに留めた。
だが、中国事情に詳しいライターの西谷格氏は、「以前から中国の日本人学校は標的になるリスクがあった」と語る。
「日本人学校は現地の日系企業の商工会が母体となって運営していますが、近年も投石や卵が投げ込まれるなど、反日感情を抱く中国人の攻撃の的になってきました。『中国通のスパイを養成する場所なのだろう』『中国人がなかに入れないのはおかしい』など、日本人学校を敵視するヘイトスピーチは以前から続いていました。今回は、親子に対する凶行という最悪の形で噴出した」
「日本はよく反省しろ」
事件について中国のSNS「微博(ウェイボー)」などでは、目を疑うようなコメントもあるという。
「『日本人はどうでも良いがバスと中国人女性が無事なら良かった』『なぜこういうことが起きたか、日本はよく反省しろ』など、冷淡な意見が目立ちます。『これを機に日本人学校などなくしてしまえ』という過激なものもありました。今後、模倣犯が現われるなど事件を契機に反日運動が活発化する危険もある」(同前)
日中間の溝が深まることがあってはならない。
※週刊ポスト2024年7月12日号