北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会は今年3月ごろから全国の司法機関に対して、最高指導者・金正恩党総書記の生母である故・高容姫(コ・ヨンヒ)氏の記録映画や映像、写真に加え、書籍や絵画まで、あらゆる種類の資料を回収し破棄するよう命じていたことが明らかになった。
党中央委はその理由は説明していないが、高氏が在日朝鮮人であることが関係しているとみられる。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
高氏に関する代表的な記録映画は党中央委の映画文学編纂グループが制作した『偉大なる先軍朝鮮の母』で、2004年8月に亡くなるまでの高氏の52年の生涯を描いたドキュメンタリー映画。
正恩氏が父、金正日総書記の後継者に決まったあとの2011年に制作。作品は党、政府機関、軍の高官に学習用として配布され、市中に多数出回っている状況だ。
このほかにも、高氏の業績をたたえるCDやビデオ、書籍、絵画なども多数、党員や幹部に配布されており、突然の回収命令に疑問が広がっているようだが、当局はその理由を説明していない。
高氏は1952年6月に大阪市生野区鶴橋で生まれた在日朝鮮人で、10歳の時に北朝鮮に渡ったとされるが、それが今回の措置の背景にあるとの見方が出ている。実は北朝鮮の公式見解では高氏は済州道済州市出身ということになっている。また、父親は旧日本陸軍の大阪軍需工場で働いていたことが分かっているが、正恩氏の祖父が旧日本軍と関係があったことも不都合だとされている。
さらに、正恩氏が2012年に最高指導者に就任してから、すでに12年が経過しているが、いまだに正恩氏の詳しい経歴が発表されていないのも、同じ理由からだとみられる。