ライフ

食塩の摂取量がアトピー性皮膚炎の湿疹リスク増加に関連、美容においても一般的な問題、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究から明らかに

(写真/イメージマート)

食塩は健康との関連が密接(写真/イメージマート)

 湿疹に悩まされている人は少なくないだろう。美容の面でも一般的な問題の一つ。そんな中で、日常的な塩分摂取量が増えるほどアトピー性皮膚炎の湿疹リスクが増加する恐れがあることが新たに分かった。

 米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究グループが、2024年6月に報告している。

湿疹の原因と塩分摂取の関係

・アトピー性皮膚炎:体に湿疹ができる皮膚の病気で、肌の乾燥やかゆみを引き起こす。
・ 外見に影響:アトピー性皮膚炎による湿疹は外見に大きな影響を与える。
・新たな研究:カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究で、塩分(ナトリウム)が湿疹を発症させる要因であることが報告された。
・調査:英国UKバイオバンクのデータを分析し、21万5000人以上の30歳から70歳の食生活と湿疹との関連を研究した。
・方法:尿の分析でナトリウム摂取量を特定し、電子カルテでアトピー性皮膚炎の診断や重症度を確認した。

 体に湿疹ができる皮膚の病気であるアトピー性皮膚炎は肌の乾燥やかゆみを引き起こす厄介な病気だ。一般的に成長に伴い症状がなくなる人も多いが、大人でも身近な問題になっている。日本では10人に1人ほどの割合でアトピー性皮膚炎が認められるという複数の調査がある。一方、米国でも3100万人がアトピー性皮膚炎の症状を持ち、その割合は10人に1人とされる。さまざまな要因が症状につながるが、環境や生活習慣、特に食事が関係していることも考えられている。アトピー性皮膚炎による湿疹は外見に大きな影響を与える。美容医療を検討する人の中にも悩まされている人はいるかもしれない。

 今回、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究グループが、塩分(ナトリウム)が湿疹を発症させる要因として報告した。ナトリウムは通常食塩(塩化ナトリウム)として摂取され、食塩の摂取量が高いとさまざまな病気につながることもあり、一般的に減塩を心掛けるよう注意が促されている。そうした中で、食塩摂取が湿疹とも関係することが新たに発見された。

 研究者たちは、世界的に有名な大規模な調査である英国UKバイオバンク(UK Biobank)のデータを分析することで、30歳から70歳の21万5000人以上の食生活と湿疹との関連を研究した。尿の分析から個人のナトリウム摂取量を特定し、電子カルテからアトピー性皮膚炎の診断や重症度も確認した。

研究結果が示す塩分制限の重要性

・ナトリウムの影響:摂取するナトリウムが1グラム増えるごとに湿疹が11%、活動性湿疹が16%、湿疹の重症度が11%増加する。
・食事の塩分制限:湿疹の悪化を止める手段になる可能性がある。
・対策:湿疹に悩まされている人は、食事の改善、特に塩分摂取に注意することが推奨される。

 こうして判明したのは、摂取するナトリウムが1グラム増えるごとに湿疹が11%、炎症やかゆみが続く活動性湿疹が16%、湿疹の重症度が11%増加すること。

 研究では、米国健康栄養調査の1万3000人の成人のデータからも、1日に1グラムの塩分摂取が増えると活動性湿疹のリスクを22%増加することが確認された。食事中の塩分制限が、湿疹の悪化を止める手段になる可能性がある。

 日本では一般的に食事から摂取される塩分量が多いとされている。湿疹に悩まされている人は、食事の改善、とりわけ普段の食事から摂る塩分に気を付けるとよいかもしれない。

参考文献

UCSF News. (2024年6月5日). Why Do 1 in 10 Americans Get Eczema? Is it Too Much Salt?

Chiang BM, Ye M, Chattopadhyay A, Halezeroglu Y, Van Blarigan EL, Abuabara K. Sodium Intake and Atopic Dermatitis. JAMA Dermatol. 2024 Jun 5. doi: 10.1001/jamadermatol.2024.1544. Epub ahead of print. PMID: 38837130; PMCID: PMC11154362.

耳の後ろと足の指の間は要注意?スキンケアの新たな発見とは、湿疹やニキビとも関係か

アレルギー疾患疫学調査文献データベース

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

ヒフコNEWS

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

関連キーワード

トピックス

被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
NHKの牛田茉友アナウンサー(HPより)
千葉選挙区に続き…NHKから女性記者・アナ流出で上層部困惑 『日曜討論』牛田茉友アナが国民民主から参院選出馬の情報、“首都決戦”の隠し玉に
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
フジテレビの取締役候補となった元フジ女性アナの坂野尚子(坂野尚子のXより)
《フジテレビ大株主の米ファンドが指名》取締役候補となった元フジ女性アナの“華麗なる経歴” 退社後MBA取得、国内外でネイルサロンを手がけるヤリ手経営者に
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(時事通信フォト)
《「心神喪失」の可能性》ファストフード中学生2人殺傷 容疑者は“野に放たれる”のか もし不起訴でも「医療観察精度の対象、入院したら18か月が標準」 弁護士が解説する“その後”
NEWSポストセブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと住所・職業不詳の谷内寛幸容疑(右・時事通信フォト)
〈15歳・女子高生刺殺〉24歳容疑者の生い立ち「実家で大きめのボヤ騒ぎが起きて…」「亡くなった母親を見舞う姿も見ていない」一家バラバラで「孤独な少年時代」 
NEWSポストセブン
6月にブラジルを訪問する予定の佳子さま(2025年3月、東京・千代田区。撮影/JMPA) 
佳子さま、6月のブラジル訪問で異例の「メイド募集」 現地領事館が短期採用の臨時職員を募集、“佳子さまのための増員”か 
女性セブン
〈トイレがわかりにくい〉という不満が噴出されていることがわかった(読者提供)
《大阪・関西万博》「おせーよ、誰もいねーのかよ!」「『ピーピー』音が鳴っていて…」“トイレわかりにくいトラブル”を実体験した来場者が告白【トラブル写真】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《広末涼子が釈放》「グシャグシャジープの持ち主」だった“自称マネージャー”の意向は? 「処罰は望んでいなんじゃないか」との指摘も 「骨折して重傷」の現在
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン