中国の習近平国家主席は5月中旬、フランス、セルビア、ハンガリーの欧州3カ国を歴訪したが、これについて米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」にコメントを求められた吉林大学のドイツ人助教ビョルン・アレクサンダー・デューベン博士が、何の前触れもなく大学側から解雇を言い渡されたことが明らかになった。
その理由として外国の報道機関のインタビューに応じる前に、大学側に報告しなかったことなどを挙げているが、当の助教は「この解雇は言論の自由を一著しく阻害するもので、中国共産党の強権体質を証明している」などと激しく抗議しているという。VOAが報じた。
デューベン氏は、吉林省琿春市の中国・北朝鮮・ロシアの国境にある吉林大学国際公共政策学院で国際関係学の教鞭を執っていた。
デューベン氏は同大に赴任する前は、キングス・カレッジ・ロンドン(戦争学科)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(国際関係学科)で安全保障学、外交学を教えており、2014年に吉林大学に招聘された。
デューベン氏は習氏の欧州3カ国歴訪について、VOAの電話取材を受け、「米国と欧州連合の間にくさびを打ち込むことは、間違いなく北京(中国政府)の長期的な基本的目標の1つである可能性がある」などと答えていた。
この発言が報じられた4日後の5月15日の早朝、その日の2つの講義の準備をしていたデューベン氏は大学事務局から「使える教室がない」としてその日の講義の中止の連絡を受け、その後、「すべての講義とコースの無期限中止」を通告された。
また同氏は2033年まで有効な中国高級外国人人材ビザ(Rビザ)を保有していたが、中国当局からビザが取り消され、2週間以内に中国を離れるよう通告を受けた。事実上の解雇通知だった。
デューベン氏はこれまでも海外メディアの取材を受けているが、今回は習近平氏の名前をあげたことが問題視された可能性も指摘されている、同氏はすでにドイツに帰国しているという。