全国的に美容医療のトラブルが増えていることが問題視されている中、相談の急増が愛知県から報告されている。
愛知県が2024年6月27日に2023年度の「消費生活相談」の集計結果を伝えているが、この中で美容医療に関する相談が前年度の2.5倍だったことが明らかにされている。
20代、30代を中心に美容医療トラブル増加
ヒフコNEWSで伝えているが、国民生活センターによると、全国の美容医療に関する相談は2023年度に前年の1.57倍の5833件だった。愛知県はこれを上回る増加を示していることになる。
具体的には、愛知県の相談件数は前年の145.8%増の472件で、約2.5倍となった。5年間の推移を見ると、2019年度~2022年度は徐々に増加していたものの、102件~192件の範囲だった。このため2023年度には一挙に大幅に増加する状況となった。
年代別の件数も示されているが、70代以上を除くすべての年代で相談が急増していた。中でも20代は前年比182.8%増の181件、30代は124.1%増の121件であった。
愛知県では、代表的な相談事例として次のような相談を挙げている。美容外科のカウンセリングで不安をあおられ、高額な契約をさせられた、アンチエイジングの施術でその部位が腫れたといった健康被害が紹介されている。
愛知県では美容皮膚科が2023年12月に倒産
愛知県ではトラブル急増の背景について具体的な理由は示していないが、23年12月に名古屋市の美容皮膚科しらゆきクリニックが破産手続の開始を通知され、混乱を招く事態が起きた。返金や施術を受けられなくなった被害者が約1500人と伝えられていた。この美容クリニックの閉鎖が影響した可能性も考えられる。
愛知県では、3つのアドバイスを示している。
・美容目的の施術は、多くの場合、緊急性がなく、「今すぐに施術が必要だ」と不安をあおられたり、「通常価格からの値引き」を提案されたりしても、その場で契約や施術をしないようにする。
・「切らない」、「施術跡がばれない」などと手軽さを強調されても、施術にはダウンタイムやリスク、副作用などを伴う場合がある。これらについて医師から説明を受け、十分に納得した上で判断する。
・特定商取引法に定める一部の美容医療サービスでは、サービスの提供期間が1カ月を超え、金額が5万円を超える契約は、契約書面を受け取った日から8日以内であれば、クーリング・オフが可能である。
美容クリニックでは、カウンセリングを担当するスタッフにノルマが課せられているケースが存在すると指摘される。そうなれば、無理な契約を結ばされることが起こりやすくなると予想できる。後悔しないためにも、施術の必要性やリスクなどを慎重に検討することが重要だ。
参考文献
消費者トラブル情報<あいちクリオ通信2024年6月号>2023年度消費生活相談の集計と分析
美容医療のトラブルに関連した相談が前年比1.57倍に、2023年の合計は5833件、国民生活センターまとめ
名古屋「美容皮膚科しらゆきクリニック」破産、返金や施術受けられぬ被害者約1500人に上る、医療脱毛の破綻で混乱
看護師覆面座談会vol.5 「ノルマがあるクリニックって存在する?そのようなクリニックに当たらないために注視すべきところ」
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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