歯科クリニックの倒産が過去最多に近いペースで増加している。
東京商工リサーチは、2024年7月4日に、2024年上半期(1月から6月)の倒産急増を報告している。
歯科診療所の急増と過剰競争
東京商工リサーチによると、倒産件数は前年同期比で150%増加し、15件に達したと報告された。これは、過去20年間で最多だった2018年同期の17件に次ぐ水準であり、現状のペースが続けば年間倒産件数の過去最多を更新する可能性も高まっている。
同社によると、歯科クリニックの数はかねて「コンビニより多い」と言われるほど増加しており、2019年時点で全国に6万8500カ所に達し、コンビニエンスストアの数を上回っている。この背景には、口腔内の健康維持に対する需要の高さや、歯科医師の独立志向の強さがある。これに伴い、競争が激化している。
また、医療機器などの設備投資にはリース導入が多く、小資本での開業が可能だが、開業後の収入次第では資金負担が大きくなるという。しかも、コロナ禍では通院控えがあり、経営が厳しい状況が続いていた。平時に戻り、来院数の回復が期待される一方で、医薬品や治療材料の高騰、人件費の上昇などが、採算悪化を招いている。さらに、人口減少が来院減少に直結し、経営を一層圧迫している。
コスト上昇と人口減少の影響
同社によると、歯科クリニックでは、技術の向上やインプラント、ホワイトニングなど高付加価値の分野への進出が求められているという。
ヒフコNEWSで伝えているように、歯科の矯正歯科ではマウスピース型の矯正が人気になっているが、歯科にとってコストが高いために利益が圧迫され、コロナ禍で収入が減少した結果、倒産するケースが報告されている。格安の治療をうたって行き詰まるクリニックもある。この状況は、エステ脱毛や医療脱毛の運営会社の破たんとも似ている。
歯科では自由診療が一般的に行われ、美容の観点からも利用が広がっている。一方で、競争激化やコストが上昇するなどにより、今後は選別が進む可能性がある。
参考文献
「歯医者さん」の倒産 2024年上半期は15件、前年の2.5倍に急増、過去最多ペースで推移
コロナ禍の影響で続く矯正歯科の経営破たん、大阪の医院が破産手続き
「補綴歯科専門医」が広告可能に、厚生労働省が医療広告ガイドラインを一部改正
全国展開の「東京プラス歯科矯正歯科」、医療法人が民事再生法申請、経営行き詰まりはなぜか?
歯科矯正で集団訴訟を起こされた会社が破産、「実質無料」うたいトラブル、割安モニター勧誘の問題は美容医療でも
東京の矯正歯科が破産の申し立てへ、歯科医師の逮捕で混乱、マウスピース矯正で路頭に迷う人々が発生
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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