ドラマや映画、CMなどで活躍する、50代の女優たち。彼女たちの魅力について、コラムニストで放送作家の山田美保子さんが綴る。
50代女性の悲哀やイケメンに抱く恋心、「花嫁の母」まで
「おばさん女優はツラいのよ」とは、在京民放各局が一斉に2時間ドラマから撤退した際の某主演女優さんのボヤキでした。
「女王」と呼ばれた片平なぎさサン(65才)を筆頭に、各局で冠シリーズをもっていらした当時50代だった主演女優さんたちは確かにツラい時期に突入。60代を迎えたいまも、かつてのような数のオファーはない状態です。
そして、「50代になっても全員が母親役をやれるわけではないんです」とは、アイドル歌手を経て時代劇を中心に活躍していた女優さんの分析でした。1980年代、「カワイイ」で売った彼女は童顔のままアラフィフに。確かに、お母さん役をするには無理がありました。
そんな中、ドラマに映画にCMに、「おばさん」はこの人しかいないの?という活躍ぶりを見せていらしたのが堀内敬子サン(53才)です。ほんわかしたルックスなのに、悪女やワケあり女も演じられれば、広瀬すずサン(26才)の母親役として味の素冷凍食品「ギョーザ」のCMにも出演。「いいんじゃなぁい?」と広瀬サンと顔を寄せ合った芸の幅の広さが、有名クリエーターから指名を受け続けるゆえんだと思います。
が、近年、“ポスト堀内敬子”と言うべき、「シン・おばさん女優」が目立ち始めているのです。
見つける最大のポイントは、人気ドラマのお母さん役をチェックすることです。
まずはNHK連続テレビ小説『虎に翼』で、花江(森田望智サン・27才)の母親を演じ、直道(上川周作サン・31才)との結婚食事会のシーンに出ていらした赤間麻里子サン(53才)。
クリエーターチーム『こねこフィルム』が作った「年齢確認」シリーズでの演技があまりにもすばらしく愛らしかった赤間サンが、4月期のマイベストドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)の第10話で、ゲスト患者役の加藤雅也サン(61才)の妻役を好演されたときには、「コンビニの人だ!」とネット民の皆さんが大いに沸きました。
私の友人で会員制バー『銀座Room』のkazuquoママは「年齢確認」の赤間サンにゾッコン。某ホテルでランチ中、スマホで『こねこフィルム』の動画を見ながら2人で爆笑が止まりませんでした。“まだ”のかたはぜひとも検索してご覧になってください。必ずハマりますから。
動画ではおばさん扱いをされたくない50代女性の悲哀やイケメン店員からの思いもよらぬ言葉にハートをわしづかみにされる姿などを演じ、さらに『アンメット〜』では「絵のモデルになって」と頼んできた画家の男性を最期まで支える心意気と美貌。そして“とらつば”で「花嫁の母」として黒留袖を見事に着こなす貫禄は赤間サンならではと思います。
7月期のドラマからは『マウンテンドクター』(カンテレ・フジテレビ系)で岡崎紗絵サン(28才)の母親役で内科クリニック院長役でもある池津祥子サン(54才)も「シン・おばさん女優」のお一人。
あの「大人計画」のご所属で、2023年4月期のドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)で、オードリーの若林正恭サン(45才)役を好演したKing & Princeの高橋海人クン(25才)の母親役も印象に残っていますが、私は2022年10月期ドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』(カンテレ・フジテレビ系)での新聞記者役が大好きでした。
最終話、大門副総理(山路和弘サン・70才)の“ぶらさがり”で勢い余って「大門!」と呼び捨てにするくだりは特にシビレました。ああいう女性記者が実際にもいたらいいのにと心から思ったし、「まだ、終わってませんよ!」と食い下がる池津サンをいまもリピートしながら、『エルピス〜』続編を願い続けている私です。周りの男性記者がそれに乗っかっているカンジも見事すぎる演出でした。
キャリアウーマンも専業主婦もやれてしまう池津サンの説得力ある演技には、いつも目も心も奪われます。