「全身脱毛6カ月0円」という無料キャンペーンの広告を見てエステ脱毛を検討してカウンセリングを受けたところ、全く別の有料契約をさせられたが、その後、支払いが困難になり、解約トラブルに巻き込まれた。
2024年7月、このような利用者とエステ店の間の対立がどのように解決に至ったかが、国民生活センターから公表された。
「無料トライアル」の広告と有料契約にギャップ
・トラブルの始まり:2023年5月、Aさんが「全身脱毛が6カ月分0円」のキャンペーンに応募。
・契約内容:無料トライアルの説明なく、約27万円の2年間通い放題コースを契約。
・支払い方法:18歳の学生でバイト収入しかないAさんがローンを組む。
・中途解約の申し出:1回施術後、ローン支払いの負担を実感し、中途解約を申し出る。
・エステ店の請求:キャンセル1回分、施術1回分、中途解約手数料を合わせた11万円を請求。
・Aさんの希望:実際に施術を受けた1カ月分と中途解約手数料のみを支払う内容を希望。
国民生活センターは「紛争解決委員会」を通して消費者が巻き込まれたトラブルを解決する「ADR(裁判外紛争解決手続)」に取り組んでいる。これらのトラブルのうち、重要なケースが公表されている。7月10日に公表された事例のうち美容整形外科手術と医療脱毛のトラブルを既に紹介したが、今回はエステ脱毛の解約トラブルを取り上げる。
始まりは2023年5月、Aさんが動画投稿サイトの広告で、エステ店舗の「全身脱毛が6カ月分0円」というキャンペーンに応募したことだ。Aさんは店舗を訪れたが無料トライアルの説明はなく、ひげ脱毛のコースを示され約27万円の2年間通い放題コースに誘導されて申し込むことになった。18歳の学生で定職はなくバイト収入があるだけで、ローンを組むことで契約した。
Aさんは、その後脱毛を1回受けたが、ローン支払いの明細が届き、支払いの負担を実感し、中途解約を申し出た。しかし、Aさんが最初に日程間違いにより当日キャンセルしていたこともあり、キャンセル1回分と実際に受けた1回分のそれぞれ4万6000円に、中途解約手数料2万円を加えた11万円の解約金がエステ店から請求された。Aさんはこれに対して消費生活センターに相談したが、解決には至らなかった。
国民生活センターの仲介委員の助言を受け、エステ店は契約金額を24分割し、そのうちの3カ月分と中途解約手数料2万円を加算して清算する方法を提案。一方、Aさんは実際に施術を受けた1カ月分と中途解約手数料を支払う内容を希望した。
4万円の解約料で解決
最終的に、仲介委員の調整により、エステ店が譲歩して、提案した2カ月分の単価と中途解約手数料で清算することに合意。信販会社もキャンセル処理を行い、Aさんは約4万円を支払うことで、和解が成立した。
このように和解に至ったが、Aさんの事例からは、無料で脱毛を受けられるという広告を出しているエステ店でも、実際に利用しようとすると、有料のコースに誘導される場合もあることが理解できる。契約してから解約しようとした場合には、トラブルにつながりやすい。契約の際には、慎重に検討することが欠かせない。
参考文献
国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和6年度第1回)
医療脱毛クリニック突然閉鎖、医療ローン返金不可に、美容医療の落とし穴、お金が返ってこない問題の内情とは、国民生活センターがトラブル詳細を公表
美容医療とクーリング・オフ Vol.1 契約を解除できるケースとその条件
美容医療とクーリング・オフ Vol.2 関連商品と「美容目的」の範囲
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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