2005年から2022年までの17年間、米国で、中国の諜報機関である国家安全部の工作員として、天安門事件当時の学生運動指導者、王丹氏ら中国民主化運動活動家らと接触。国家安全部に情報を提供していたなどとして逮捕、起訴されていた中国系の米国市民、王書君氏の裁判が7月29日、米ニューヨークの裁判所で始まった。
王氏は「中国の代理人」としてスパイ活動を行い、米連邦捜査局(FBI)に虚偽の陳述をしたなど、合計4つの罪に問われており、有罪となれば、最高25年の懲役刑に処せられる。
王氏の弁護士は罪状認否で、「王氏は違法な活動を行っておらず、米国の民主活動家らの支持を勝ち取って社会変革を促進しようとしており、断じて中国のスパイではない」などと主張した。香港紙「明報」が報じた。
中国山東省青島市の青島大学の教授だった王氏は、1989年6月の天安門事件後、政府の抑圧を恐れて渡米、1994年に客員研究員としてニューヨークのコロンビア大学に留学し、1996年にグリーンカードを取得し、2003年に米国市民権を取得していた。
その後、王氏は2006年には、王丹氏らとともに、中国の民主化運動に理解を示した胡耀邦・中国共産党総書記や趙紫陽総書記を称える「紀念胡耀邦趙紫陽基金会」の創設者の一人として名を連ね、基金の事務局長として香港の民主活動家、台湾独立運動家、中国の少数民族のウイグル族やチベット族の活動家らの情報を収集してきた。その一方で、王氏はたびたび訪中するなどして、米国で得た活動家との会話や民主団体の活動内容などの情報を国家安全部要員に渡していたという。
しかし、そうした活動がFBIに不審に思われ、中国側とメッセージアプリなどを使って連絡したことなどが分かり、2022年3月16日に逮捕され、その後起訴された。具体的には、FBI捜査官の尋問に対する虚偽証言罪などに問われている。逮捕当時は73才だった。
また、王書君氏が情報を渡していたとされる中国国家安全部の担当者4人も指名手配されている。