国民の政治不信はピークに達している。裏金問題の後も自民党では「政治とカネ」のスキャンダルが続き、防衛省・自衛隊の手当不正受給の不祥事でも、政治家は誰も責任を取らない。
ところが、自民党内からは岸田首相の責任を問う声さえあがらないのだ。国民が政治の何に怒り、絶望しているかを全くわかっていない。
「岸田首相はもう限界」では
そこで声をあげるのが、元自民党事務局長で選挙・政治アドバイザーの久米晃氏(70)だ。足かけ40余年にわたって自民党政治を内側から支えてきた人物だ。選挙の事務責任者として衆院選13回、参院選13回を取り仕切ったことから「選挙の神様」とも呼ばれる。
久米氏は選挙を見てきた独自の視点から「岸田首相はもう限界」と語る。
「政治家は夢を売る商売なんです。国民に夢を語って、それに対する投資が票になる。しかし、その前に信用が必要。『この人が言っていることは間違いない、信用できる』と思われて初めて票を投じてもらえるのです」
だが、岸田首相は違ったようだ。
「岸田さんは『諸課題に取り組んで結果を出す』と何度も言ってきたが、就任以来、国民に見える形での結果は一つも出ていない。たとえば『憲法改正を私の内閣でやる』とも表明したのだが、いつのまにか立ち消えになってしまった。その他の諸課題も、異次元の少子化対策とか派閥解消とか、思いつきでコロコロ変わる。支持率というのは信用度のバロメーター。岸田さんは国民に夢を語る前に結果が出ていないから、この人の言うことなら間違いないという信頼感が生まれてこない。だから支持率が上がらない」
そんな岸田政権と自民党に対する国民の視線は、2009年の政権交代時より厳しいという。
「2009年との違いは野党の支持率が低いことですが、日本の選挙は基本的に、自民党に投票するか、しないかの選択です。自民党が有権者に拒絶されているということは、たとえ野党が弱かろうが、自民党に票は入らない。今の状況では次の総選挙で自民党に非常に厳しい結果になる可能性が高い。自民党の議員には“岸田さんでは選挙に勝てない”という共通認識があるのに、党内から辞めてくれという声があがらない。次の有力な総裁候補も見当たらない。自民党は人材の砂漠になってしまった」