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Mr.マリックが語る“ユリ・ゲラーと超能力ブーム”「私の仕事は大打撃を受けました」「解明できない“謎”を楽しむ姿勢も大事です」

記者に硬さを確かめさせた後、スプーンに触れることなく、わずか数十秒で折ったMr.マリック。「ハンドパワーです」(撮影/中庭愉生)

記者に硬さを確かめさせた後、スプーンに触れることなく、わずか数十秒で折ったMr.マリック。「ハンドパワーです」(撮影/中庭愉生)

 ユリ・ゲラーがテレビの中からスプーン曲げを日本全国に呼びかけて巻き起こった超能力ブームから早50年。超魔術師のMr.マリックが、当時の超能力ブームとユリ・ゲラーの思い出について語ってくれた。

 * * *
 初めて『木曜スペシャル』にユリ・ゲラーさんが登場した翌日から、私の仕事は大打撃を受けました。当時、デパートでマジックグッズの実演販売をしていたのですが、前日まで人だかりができていたのに、全然売れなくなった。手品を見せても、「仕掛けがあるんでしょ」と言われてしまう。ユリ・ゲラーさんにはタネがありませんでしたからね。

 数日後、デパートに来た30代の女性が「ウチの息子が家のスプーンを全部曲げて困ってるんです」と愚痴をこぼしたんです。興味があったので、家を訪ねたところ、曲げられたスプーンが段ボールに山ほどあった。他のマジシャンはあの現象に否定的でしたが、事実として子供が成功していました。

 私は、ユリ・ゲラーさんを目標にしました。アメリカやフランスに行って超魔術の研究を重ねて、1989年には彼と同じ『木曜スペシャル』で番組を任せてもらえた。本当に嬉しかったですね。その後、営業の仕事に行くと、楽屋に見知らぬ人がいきなり訪ねてきました。現金300万円を束で出し、地図を見せながら「ここらあたりに徳川埋蔵金があるはずだから、その場所を当ててほしい」と頼んでくるんですよ。「出てきたら半分差し上げます」と真顔で言われました。半分じゃ少ないだろう……と思ったけど(笑)。日本では「本当かインチキか」の二択で考える人が多く、信じると極端な方向に走る。自分に解明できない“謎”を楽しむ姿勢も大事です。

 1992年、ユリ・ゲラーさんに赤坂プリンスホテルでお会いできました。「何で曲げられるんですか?」と聞き飽きたであろう質問にも、「スプーン曲げは人の心の中にある」と答えてくれました。曲げたいと思えば曲げられる。だから、疑う大人は無理だけど、素直な子供はできる。人間の潜在能力を引き出していたんですね。

【プロフィール】
Mr.マリック(ミスター・マリック)/1949年生まれ、岐阜県出身。ホテルでのマジックショーなどを経て、1988年『11PM』出演を皮切りに「超魔術」ブームを起こす。

取材・文/岡野誠

※週刊ポスト2024年8月16・23日号

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