プロ野球のレジェンドたちが登場する本誌・週刊ポストの名物企画「言わずに死ねるか!」球界編。辛口評論で知られる江本孟紀氏(77)は、話題の「7回制導入」に物申す。現役時代に南海でエースを張り、阪神移籍後に「ベンチがアホやから野球ができへん」の“暴言”の責任を取って引退したが、今もその舌鋒は鋭い。高校野球の「暑さ対策」の話題は、江本氏の目にはどう映るのだろうか。【全5回の第5回。第1回から読む】
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猛暑対策として、高校野球で「7回制導入」の議論が始まったという。選手の健康面を考慮して、試合時間を短縮するのが狙いだという。もちろん、選手の健康面に配慮して、何か対策を検討することにイチャモンをつけるつもりはない。だけど、9回を戦うという野球の本質・根幹を変えようというのはあまりにも拙速。チンケなことを考える高野連には、ちょっとええ加減にせいよと言いたいね。
そりゃダメでしょう。野球は9回でしょう。暑いからとゴルフを16ホールでやりますか。我々年寄りが“14ホールでいいかな”と思っても、18ホールやらないとホールアウトしたことにならない。暑いからといってマラソンを30キロでやりますか。そんなことを言い出すのは野球だけですよ。
野球は9回を9人で打って守るスポーツ。暑さ対策なら、他にもいくらでもある。たとえば、ベンチ入りを大幅に増したっていい。昨年、20年ぶりに18人から20人に増員したが、倍の40人ぐらいにしたらどうか。ベンチ入りできなかった選手が炎天下のアルプススタンドで汗だくになって応援しているんだから、ベンチ枠を増やしてやればいい。選手の出場チャンスは広がるし、2イニングずつ出ればレギュラーの負担も軽減される。
高校球児の声を無視してはいけない
全国の高校球児にアンケートを取って、“7回がいいです”“私たちしんどいです”という声が圧倒的なら7回制にすればいいですよ。でも、高校球児は炎天下の甲子園で野球をするためにガキの頃から練習している。それを無視するようなことを言っちゃダメですよ。先日もある高校球児と話をしたら“みんな9回やりたい。そのつもりで練習しています”と言っていた。子供たちのやる気をどうすれば活かせるかを考えてもらいたい。
そもそも、ノーヒットの試合だと9人のバッターのうち6人は、試合終了までに3回打席に立てない可能性がある。そんなおかしなルールを教育現場でやっていいのかと言いたいね。特に高校野球は地方大会で負けたら終わり。新幹線や飛行機でやってきた甲子園に出場しても1回戦で負ければ終わり。そんな大事な試合を9回ではなく7回にしたらどうかと議論することが馬鹿げている。
要するに、あまりにも大衆迎合主義なんですよ。世の中の風潮にすぐ惑わされるというか、子供の意思を無視し、伝統ある野球のルールを勝手に変えてはアカンでしょう。これまでの甲子園で生まれた数々の記録を塗り替えることができなくなる。