放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は“聞き上手”に囲まれた幸せについて綴る。
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幕を閉じれば結局五輪の日本は強かった。ガガに始まりトム・クルーズに終わる私の演出の妙(ン? 私はノータッチ? そうだっけ?)。「金20個とった」と大騒ぎ。我々の業界的に言えば“田中(爆笑問題)20人分”ということである。相方太田はニコタマである。
瞳を閉じればやっぱり力道山は強かったという話である。『力道山未亡人』(小学館)がよりにもよって相当面白く、かなり売れてるときき著者の細田昌志を呼び出し、一之輔(『笑点』)と「焼き鳥で一杯やろう」と約束。お盆の季節、亡くなった人の話もいいものだ。当日新宿へ行くと何処でどう聞きつけてきたのか10人が集まっている。ポカスカジャンのタマやらロケット団の三浦やら立川志らら。「なんで?」」「噂になってまして。センセーと力道山が猪木の話をするって」。もうほとんど意味が分からない。
細田と私で古いプロレスゴシップの応酬。ステキなキャラの未亡人の話。そこから芸能界のスキャンダルの大行進に、参加した10人は生ツバゴクリと息をのむ。作家でもスタッフでも芸人でもこの世界にいる以上、一番の御馳走が噂の真相なのだ。
「ところで高田センセーの“月刊Takada(飛鳥新社)”どの位行きました?」「いま4刷」。細田小さくガッツポーズをしやがって「勝ったー。私、5刷が決まりました。小学館サマサマ、サマーバーゲンです」。うるせい。
「もっと力道山とか、豊登とか遠藤幸吉の話をきかせろ」。まあ出てくる、出てくる。好きな話をして、一杯やって聞き上手に囲まれているというのが一番の幸せだネ。誰が言ったかこの「未亡人の会」が「高田文夫の話を愛する会」と名が変わっていた。マスコミ仕事をしながらこうしたミニコミ交流も大切にする。まさに私は“芸能の鑑”だネ。
私も飲むと談志によく言われた。「なんでお前と飲んでるか。高田に想い出をつくってやっているんだ」。今になると意味が良く分かる。
そんな2日前、野末陳平先生(92歳)が「いつも御馳走になってばかりいるからたまにはオレにいいモノ、御馳走させてくれよ」と言うので陳サマなじみの銀座の高級天ぷらへ。この世で私におごってくれるのは陳サマ只一人になってしまった。ふところ痛まないと美味だ。
今週はこのあと、悪友立川左談次未亡人を囲んだりしながら“旧だくだく会”(俳句)残党による暑気払いの会やら、孤独な松村邦洋(独身。60近い)の誕生日だから仕方なく数人集まって飲み食べる会。当の松村は一滴も飲めない下戸。(だったら誕生日なんか来なくていい!)
※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号